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猫
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「本当に君とは気が合うよね。」
「うん、そうだね。」
それは嘘ではない。
私と彼は、とても気が合う。
友人からの紹介で会ったのだけど、彼とは初日からとても気が合って、まるで、昔からの知り合いみたいな気分になった。
そんな私達は自然と付き合うようになり、結婚も意識するようになったのだけど、私にはひとつだけ心配なことがあった。
それは、彼が猫好きだということ。
なぜならば、私は…いや、我が家は昔から犬好きで、私が子供の頃から犬を飼っていたからだ。
彼とは映画の趣味も、食べるものの好みも、なんだって気が合うのに、なぜ、そこだけが違うんだろう?
犬派と猫派は性格も反対だという。
私達はこんなに気が合ってるのに、どうして?
私が犬好きだということがバレたら嫌われるんじゃないかと思って、彼には言ってない。
でも、結婚するとなれば、お互いの家にも行くだろうし、そしたら、犬を飼ってることがバレる。
それに、私が彼の猫を愛せなかったらどうしよう?
最近はずっとそのことで悩んでいる。
「ねぇ、週末、僕ん家に来ない?」
「え…えーっと…」
彼の猫に会うのが心配で、私は彼の家に行くことをずっと拒んでいた。
でも、さすがにそろそろ限界かな。
「そんなにお家デートが嫌いなの?」
「そういうわけ…でもないんだけど…」
「じゃあ、たまには良いじゃない。」
「う、うん。」
断りきれず、つい、行くことになってしまった。
*
「はい、どうぞ。」
「お邪魔します。」
初めての彼の家…それは嬉しいけれど、肝心の猫は?
「さ、そこに座って。」
「ありがとう。」
いない。猫がいない。
そう思ったら、いた。
タワーの上の方のカゴの中に…
綺麗だけど、なんだか目がキツくて怖い。
私は目を合わせないようにした。
「ピザでも注文しようか。」
「う、うん、任せる。」
彼はDVDをセットした。
猫は知らん顔だ。
思ってたのとだいぶイメージが違った。
猫は好奇心旺盛って聞いてたから、もっと寄って来るのかと思ってた。
でも、猫はかごの中で寝てるだけ。
その後も何度か行ったけど、猫は私を無視してる。
だから、怖さというか苦手意識もなくなった。
「わっ!」
そんなある日のこと。
猫が唐突に私の膝に座った。
(え、え、えぇーー!)
「なんだ、リンゴ。
お姉ちゃんの膝が良いのか?」
「へ、へぇ、リンゴちゃんって言うんだ。」
私は平静を装った。
猫は体勢を整え、丸くなって寝る。
(うわぁ。つるつるだ。)
そっと撫でてみたら、すごく滑らかで柔らかかった。
そして、猫はゴロゴロと喉を鳴らした。
(あ、喜んでくれてるの?)
そのことが、なんだかとても嬉しくて…
今までの苦手意識はすっかり吹き飛んでしまった。
「うん、そうだね。」
それは嘘ではない。
私と彼は、とても気が合う。
友人からの紹介で会ったのだけど、彼とは初日からとても気が合って、まるで、昔からの知り合いみたいな気分になった。
そんな私達は自然と付き合うようになり、結婚も意識するようになったのだけど、私にはひとつだけ心配なことがあった。
それは、彼が猫好きだということ。
なぜならば、私は…いや、我が家は昔から犬好きで、私が子供の頃から犬を飼っていたからだ。
彼とは映画の趣味も、食べるものの好みも、なんだって気が合うのに、なぜ、そこだけが違うんだろう?
犬派と猫派は性格も反対だという。
私達はこんなに気が合ってるのに、どうして?
私が犬好きだということがバレたら嫌われるんじゃないかと思って、彼には言ってない。
でも、結婚するとなれば、お互いの家にも行くだろうし、そしたら、犬を飼ってることがバレる。
それに、私が彼の猫を愛せなかったらどうしよう?
最近はずっとそのことで悩んでいる。
「ねぇ、週末、僕ん家に来ない?」
「え…えーっと…」
彼の猫に会うのが心配で、私は彼の家に行くことをずっと拒んでいた。
でも、さすがにそろそろ限界かな。
「そんなにお家デートが嫌いなの?」
「そういうわけ…でもないんだけど…」
「じゃあ、たまには良いじゃない。」
「う、うん。」
断りきれず、つい、行くことになってしまった。
*
「はい、どうぞ。」
「お邪魔します。」
初めての彼の家…それは嬉しいけれど、肝心の猫は?
「さ、そこに座って。」
「ありがとう。」
いない。猫がいない。
そう思ったら、いた。
タワーの上の方のカゴの中に…
綺麗だけど、なんだか目がキツくて怖い。
私は目を合わせないようにした。
「ピザでも注文しようか。」
「う、うん、任せる。」
彼はDVDをセットした。
猫は知らん顔だ。
思ってたのとだいぶイメージが違った。
猫は好奇心旺盛って聞いてたから、もっと寄って来るのかと思ってた。
でも、猫はかごの中で寝てるだけ。
その後も何度か行ったけど、猫は私を無視してる。
だから、怖さというか苦手意識もなくなった。
「わっ!」
そんなある日のこと。
猫が唐突に私の膝に座った。
(え、え、えぇーー!)
「なんだ、リンゴ。
お姉ちゃんの膝が良いのか?」
「へ、へぇ、リンゴちゃんって言うんだ。」
私は平静を装った。
猫は体勢を整え、丸くなって寝る。
(うわぁ。つるつるだ。)
そっと撫でてみたら、すごく滑らかで柔らかかった。
そして、猫はゴロゴロと喉を鳴らした。
(あ、喜んでくれてるの?)
そのことが、なんだかとても嬉しくて…
今までの苦手意識はすっかり吹き飛んでしまった。
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