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ルカ(聖夜月ルカ)

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虫めがね

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(あぁ、畜生!なんも見えない!)



俺はひとりで癇癪を起こした。
仕方がない。
やはり、使うか…



「なるほど。わかった。」

俺は手早くLINEの返信をした。
別に、文字を打つのが苦手なわけじゃない。
ただ、見えないだけなんだ。



スマホの文字がどうにも見えにくくなったのは、昨年あたりからだったか。
スマホの文字を拡大しようかとも思ったが、職場で見られたらカッコ悪い。
これでも俺はカッコイイ課長として人気があるんだ。
皆の期待を裏切ってはいけない。



だから、小さいままなんだけど、最近ではもう何が書いてあるかわからない。
ただの小さいもやもやだ。
そんな時は、虫めがねを使うんだ。
虫めがね越しに見ると、文字はくっきりと見える。
大袈裟に言えば、魔法みたいなもんだ。



でも、職場では虫めがねなんて使えない。
最近ではパソコンの文字もかなり見えにくい。
全く見えなくなったら、どうしたら良いんだろう?



そもそもどうしてなんだろう?
なんでこんなに見えないんだろう?
まさか、目の病気?
不安と不便に押しつぶされそうになり、俺はついに眼科に行くことにした。







「老眼ですね。」

「えっ!ろ、老眼!?」

確かに、小さな文字の視力検査は0.2だった。
その事にも驚いたが、なにぃ?老眼だと!?



「そろそろ眼鏡を使われた方が良いかもしれませんね。」

「め、眼鏡ですか?」

虫めがねなら、もうだいぶ前から使ってるけど、それじゃなくて、普通の眼鏡…それも老眼鏡のことだよな。
だめだ、だめだ。
老眼鏡なんてかけたら、皆の期待を裏切ってしまう。
かといって、コンタクトはなんか怖いし。



迷った末に、俺は老眼鏡を誂えた。
パソコンが見えなくなってしまったからだ。



「課長、素敵!」

「眼鏡も似合いますね。」

あんなに心配していたのに、老眼鏡は意外にも好評だった。
自分でいうのもなんだけど、理知的に見える。
しかも、老眼鏡のおかげで、スマホもパソコンもはっきり見える。



(今までどうもありがとうな。)

俺は、今まで使っていた虫めがねを引き出し深くにしまった。
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