タイトル未定

5：迷いの森

２

「おかしいなぁ…」

ディヴィッドの口から、思わずそんな言葉が漏れ出た。



北に行けば町があると聞いたのに、進めば進むほどあたりには木々が生い茂り、深い森となって行った。
やがて、日が暮れ、ディヴィッドは、自分が道を見失っている事に気が付いた。



（はぁぁ…なんてこった。
一体、どこで道を間違えたんだろう…？
あぁ、腹が減った…）



あの時、商人が言いかけた言葉…
「……ですが、北の町の手前には迷いの森と呼ばれる危険な森がありますから、そこは迂回していかなければなりません。」
その言葉が最後まで発せられていればこんなことにはならなかったのだが、そんなことをディヴィッドが知るはずもなかった…

ディヴィッドがあてもなく森の中を歩いていると、少し離れた所に灯かりのようなものが見えた。
明らかにそれは人工的な灯かり…
すなわち、そこには人がいるということだと考えたディヴィッドは、その灯かりを目指して早足で歩き出した。
灯かりに近付くに連れ、次第にそれが小屋の中から漏れる灯かりだということがわかってきた。



（助かった…）



ディヴィッドは、誰が住むともわからない小屋の扉を叩いた。
中から現れたのは、小柄な老人だった。



「いきなりすまないな…実は…」

「おぉ～～っっ！久しぶりのお客じゃ！
さぁ、入った、入った！！」

老人の歓迎ぶりは異常な程だった。
少し、不安な気持ちを感じながらも、促されるままにディヴィッドは小屋の中へ入る。



「実は…俺……」

「わかっとる、わかっとる！
迷ったんじゃろ？
腹もすいとるんじゃろ？
待っておれ！今すぐに、食事の用意をするからな！」

ディヴィッドに話す隙を与えない勢いで、老人は奥の部屋に入って行った。
その場に残されたディヴィッドは、長椅子に腰掛けじっと考えていた。
なぜ、老人はあんなにもはしゃいでいるのか…？



（……まさか…！
あの爺さんも山姥みたいに俺を食おうとして…？
でも、今の俺はあの時みたいに肉付きが良いことはないぞ。
決してうまそうには見えないと思うんだが…
だけど、久しぶりの獲物だとしたら、そんなことかまっちゃいないか？
やばい！ど、どうしよう？！）



ここはやはり逃げ出すべきか…？
ディヴィッドがそう決断した時、ディヴィッドの鼻腔をなにやら良い匂いがかすめ、料理を抱えた老人が部屋に戻って来た。