夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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「……俺は、とにかく不安で…大変なことをしてしまったという不安で押し潰されそうになり、仕事にも行かず、しばらく家に閉じ篭もっていた。
だが、一週間程した頃だろうか…気持ちが落ちついて来ると、俺はありもしない幻に怯えていたんだと思えるようになっていた。
あれは、願い石なんかじゃない。
ただの硝子玉なんだって。
ロザリアさんはきっと勘違いをしてたんだ。
そんな風に思えて来た。
……いや、今にして思えば、きっと、そう考えたかったんだろう…
硝子玉はきっと、元々ひびが入ってただけなんだ…何も心配することなんてないんだ。
……そう思い直して、俺は、またあの祠に向かった。
そこで、石を見た俺は、その考えが間違いだったことを思い知った。
 石にはあの時とは比べ物にならないほどの亀裂が入り、今にも割れそうになっていた。
 俺は、恐ろしくて、その石を地面に叩き付けた!
……なのに…なのに、その石は割れなかった。
 何度も何度も叩きつけ、足で踏み散らかしたが、石は割れないんだ…
その時の恐怖を俺は今でも忘れられない……
これは、ただの硝子玉なんかじゃない…本物の願い石なんだ。
……俺にはそのことがはっきりとわかった……」

オスカーの当時の心境が三人にも手に取るように伝わった。
 遊び半分でかけてしまった願いは、取り消すことは出来ず、それを止めようにも止める事は出来ない…
それがどれほど恐ろしい状況であるかを、三人は想像し、心を痛めた。



 「俺は、ついに諦めてその石を家に持ち帰った。
そしてエリーにみつからないように、戸棚の奥に仕舞っておいた。
……俺が願い石を家に持ち帰って、二、三週間した頃だっただろうか…
エリーが出掛けてたある日、俺は、あの石をのぞいてみた。
 石には隙間ない程に亀裂が走っていた。
それを手に取った瞬間……石は乾いた音と共に砕け散った…」

 「それじゃあ…あんたの願いは……」

オスカーは俯いたままゆっくりと頷く。

 
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