夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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四つ目の大陸

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 「う…うぅん……」

 「あ!フレイザー!気が付いたのか!」

 病室に興奮したジャックの声が響く。



 「え……!?
な、なんだ、皆…あれっ?ここは?あ…」

 身体を動かそうとしたフレイザーは、苦痛に顔を歪めた。



 「あ!!まだ動いちゃだめだよ!」

 「え……?」

フレイザーは、ぼんやりと天井をみつめながら頭の中を記憶の糸を手繰り寄せる。



 「あ…あぁ、そうだったな…」

フレイザーのその言葉に、部屋にいた三人も安堵の溜め息を吐いた。



 「フレイザー、気分はどうだ?
 痛くないか?」

ジャックは、フレイザーの顔をのぞきこむようにして尋ねる。



 「痛いのは痛いさ。
でも、我慢できない程じゃない。
 寝てる間はそんなことも忘れてぐっすり熟睡してたよ。
 睡眠薬っていうのはすごいもんだなぁ。
 一瞬、昨日のことも忘れてたよ。
……それはそうと、皆こんな早くから来てくれたのか?」

 「そうじゃない。
セリナとダルシャは昨日からずっとここにいてくれたんだ。」

 「……ジャックもね。」

セリナは、ジャックに優しく微笑みかけた。



 「そうだったのか…
それはすまなかったな。
……あ、そういえば、ダルシャには血までわけてもらったんだったな。
ありがとう…あんたには世話になりっぱなしだな。」

 「そんなこと気にしないでくれ。
しかし、由緒あるコンドロワイエール家の血を受けたのだから、これからは今まで以上に剣術の鍛錬や勉学に励んでくれよ!」

ダルシャは、そう言うと片目をつぶって微笑んだ。



 「コンドロワイエール家だって!?
ま、まさか、ダルシャはコンドロワイエール家の人間だっていうのか!?」

ジャックは目を大きく見開き、ダルシャの顔をまじまじとみつめる。



 「なんだ?ジャック、そのコンドロ…なんとかってのを知ってるのか?」

 「当たり前だよ、イグラシアに住んだことのある人間なら知らない者はいないんじゃないか。
……だけど、信じられない。
そんな名門貴族の人間がこんな所をうろうろしてるなんて…」

 「ジャック、うろうろは酷いな。
まぁ、とにかくそういうことは気にしないでくれ。
 旅をしている間はそんなことは関係ないからな。
あ、もちろん、エリオットやラスターにも言わないでくれよ。
……そういえば、ラスター達は大丈夫だっただろうか?」

 
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