夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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四つ目の大陸

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 「ジャック!
 来てくれたんだね、ありがとう。」

 「別に、おまえに礼を言われるようなことじゃない。
ラスターと一緒にいたくないから、俺はこっちに来ただけだ。」

 不機嫌な声でそう言うと、ジャックはエリオットから顔を背けた。



 「おいおい、ジャック。
おまえ、まだそんなこと言ってるのか…
 ……ま、喧嘩するよりはマシか。
そうだ、おまえ達、今のうちにどこかで飯でも食って来いよ。
ここじゃ、俺の分しか出ないからな。」

 「それもそうだね。
じゃあ、ジャック、行こうか…」

あまり乗り気ではなさそうなジャックだったが、エリオットに促され、渋々、後を着いて行く。



 *



 「意外と混んでなくて良かったね。
 味もまぁまぁだし…
 ……ねぇ、ジャック…
フレイザーって、男としての魅力があると思う?」

その言葉に、ジャックは口に含んだスープを噴き出しそうになって咳き込んだ。



 「ジャック、大丈夫!?」

 「な…何なんだよ、突然…」

 食堂の片隅で、ジャックは険しい顔でエリオットを睨み付ける。



 「実はね…」

エリオットは話しかけると、おかしそうにくすくすと笑い、肩をすくめた。



 「信じられない話なんだけど…
フレイザーのことを好きな女の人がいるみたいなんだ。
……多分、診療所の人なんだけど…」

 「フ、フレイザーのことを!?」

ジャックは、目を大きく見開きエリオットに問い返す。



 「そうなんだよ。
それも、どうやら一目惚れらしいんだよねぇ…
ダルシャならともかくあのフレイザーに恋してる女の人がいるなんて信じられないよね!」

 「……そ、そんなことはないと思う…」

 「……え?」

 当然、同意してくれるものと思っていたジャックの意外な返事に、今度はエリオットが丸い目をして驚いた。



 「だ、だって……ダルシャは確かにカッコイイとは思うけど完璧過ぎて近付き辛い所があるし、フレイザーはその点、なんていうか……その…笑った時なんか、けっこう可愛いと思うし…」

 「あのフレイザーが可愛い!?
そ、そうかなぁ…う~ん…まぁ、確かに、彼は子供みたいな顔して笑うけど…ああいうのを可愛いっていうのかなぁ…?」

エリオットは、腕を組み、頭をひねりながら考える。
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