夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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四つ目の大陸

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「……きっと、そのせいだと思うわ…」

 「どういうことだ?
 辛いことがあったら、他人のことなんて信じられないし考えられないんじゃないか?」

 「……私は弱虫だから…
私はジャックみたいに一人で生きていけるなんて思ったことないし、あなたよりずっとずっと弱いからよ。」

 「……どういうことなんだ?」

ジャックは、セリナの言葉の意味が理解出来ず、不思議そうな顔で問いかける。



 「以前、ある人に言われたことがあるの。
ほしいものがあるのなら、それをまず誰かにあげなさいって…」

ジャックは眉間に皺を寄せ、小首を傾げる。



 「全然意味がわからない。」

 「……あのね、私が旅を始めたのは、ラスター達に願い石を探すのを手伝ってほしいって言われたからなの。
その当時の私はとても安全な場所にいて、現実からも目を閉ざして生きていたわ…
あの辛かった出来事は夢だった…幻だったんだって自分に言い聞かせてた。
 時々、本当はそうじゃないってことが思い出されて、私は罪悪感に押し潰されそうになったけどそれでもあの場所を出る気にはなれなかった。
 正直言って、なんで旅に出ようと思ったのかよくわからないの。
あの時の私は、まだ石に反応を感じたこともなかったしみつけられる自信もなかったわ。
でも……誰かに必要とされたことが私は嬉しかったんじゃないかって…今、振り返って考えてみるとそんな気がするわ。」

 「そうだったのか…
でも……それと今の話とどう関係があるんだ?」

ジャックの質問に、セリナは悪戯っぽい笑みを返す。



 「ジャックも知ってるでしょ?
 私の母様が、願い石によって救われたこと。」

 「あぁ、詳しいことは知らないけど、だいたいのことは聞いた。
スエルシアでみつけた石でやっと願いが叶ったんだろ?
……あ、セリナあの時は…」

 「もうっ!ジャック!その話はもうやめて。
ジャック……私は、最初、ラスター達に頼まれて願い石を探し始めた。
なのに、私の願いが一番に叶ったのよ。
……それだけじゃないわ。
いつの間にか、私には信頼出来る大切な仲間も出来ていた。
 他人のために始めたはずだったのに、気が付くと私が一番幸せになっていた…」

ジャックははっとしたような表情でセリナをみつめ、やがて黙って頷いた。



 「……なんとなくわかった…セリナの言いたいこと。
 説明するのは難しいけど…なんとなく…」

 「私もうまく説明出来ない。
でも、きっとそう…ジャックが感じてくれた通りだと思うわ。」

 二人は顔を見合せてにっこりと微笑んだ。
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