339 / 802
ディーラスを目指して
25
しおりを挟む
*
(ジャックの奴、えらく遅いな…)
ベッドに寝転び、窓ガラスの向こうに見える暗くなった空を見上げながら、フレイザーはおもむろに身体を起こす。
(まさか…具合が悪くなってどこかで倒れたりしてないだろうな!?)
フレイザーはいやな胸騒ぎを覚えて立ち上がった。
(あの馬鹿、無理ばっかりして…!)
フレイザーは、自分の想像に突き動かされるように、部屋を飛び出した。
*
(一体、どこにいるんだ…)
フレイザーは町を行き交う人々にジャックのことを聞いてまわり、診療所にも足を向けたが、ジャックらしき人物を見掛けたという者はいても、その後のは足取りについてはまるで手掛かりがみつからなかった。
(診療所にいないってことは…まさか、どこか人目につかない所で苦しんでるんじゃないだろうな…
それとも、ジャックの事情を知らない奴が、あいつのことを女だと思ってかどわかしたんじゃ…)
フレイザーの脳裏には次々と悪い想像が浮かんでは消え、焦りと不安を感じながら今度は商店街の方へ走り出した。
*
「ほ、本当か?
本当にここへ来たのか?」
「あぁ、あんな真っ黒なフードをかぶったおかしな奴は、そうそういないからな。
年はまだ十五~六で、身の丈はわしと同じくらいの奴だろう?」
薬屋の店主の言葉に、フレイザーは何度も頷く。
「そ、それで、そいつ、どこに行ったんだ?」
「そこまではわからんよ。
なんでもうちの薬がよく効くってどこかで聞いたらしくって、傷薬を買いに来たんじゃ。
普通のものならあったのじゃが、あの子は傷跡を治す…消すというか、そういう効能のある傷薬がほしかったらしいんじゃな。
しかし、残念ながらその薬は今品切れだったんじゃ。」
「それで、帰ったのか?」
「いや、少しくらい残ってないのかとかしつこく訊いてきたよ。
だが、本当にないんじゃ。
先月、山に薬草を採りに行ってくれていた店の者がやめてしもうてな。
材料を採りに行ってくれる店員を探してるんじゃが、まだみつからんのじゃ。
そのことを言うたら、それはどこの山だと訊くんで…」
「教えたのか!?」
フレイザーは身を乗り出し、店主はフレイザーの気迫にたじろいで後ずさりした。
「た、確かに教えたのは教えたが…」
「まさか、あいつ…」
「まさかって……あの子が薬草を採りに行ったとでも言うのか?
そんなことはなかろう。
第一、あの子にはどれがその薬草かわからんじゃろうし、あの山には魔物が出ることも言うたんじゃぞ。
そんな所へ行く筈が…」
「どこなんだ!
その山は!」
フレイザーは苛立ち、力一杯カウンターを叩いた。
(ジャックの奴、えらく遅いな…)
ベッドに寝転び、窓ガラスの向こうに見える暗くなった空を見上げながら、フレイザーはおもむろに身体を起こす。
(まさか…具合が悪くなってどこかで倒れたりしてないだろうな!?)
フレイザーはいやな胸騒ぎを覚えて立ち上がった。
(あの馬鹿、無理ばっかりして…!)
フレイザーは、自分の想像に突き動かされるように、部屋を飛び出した。
*
(一体、どこにいるんだ…)
フレイザーは町を行き交う人々にジャックのことを聞いてまわり、診療所にも足を向けたが、ジャックらしき人物を見掛けたという者はいても、その後のは足取りについてはまるで手掛かりがみつからなかった。
(診療所にいないってことは…まさか、どこか人目につかない所で苦しんでるんじゃないだろうな…
それとも、ジャックの事情を知らない奴が、あいつのことを女だと思ってかどわかしたんじゃ…)
フレイザーの脳裏には次々と悪い想像が浮かんでは消え、焦りと不安を感じながら今度は商店街の方へ走り出した。
*
「ほ、本当か?
本当にここへ来たのか?」
「あぁ、あんな真っ黒なフードをかぶったおかしな奴は、そうそういないからな。
年はまだ十五~六で、身の丈はわしと同じくらいの奴だろう?」
薬屋の店主の言葉に、フレイザーは何度も頷く。
「そ、それで、そいつ、どこに行ったんだ?」
「そこまではわからんよ。
なんでもうちの薬がよく効くってどこかで聞いたらしくって、傷薬を買いに来たんじゃ。
普通のものならあったのじゃが、あの子は傷跡を治す…消すというか、そういう効能のある傷薬がほしかったらしいんじゃな。
しかし、残念ながらその薬は今品切れだったんじゃ。」
「それで、帰ったのか?」
「いや、少しくらい残ってないのかとかしつこく訊いてきたよ。
だが、本当にないんじゃ。
先月、山に薬草を採りに行ってくれていた店の者がやめてしもうてな。
材料を採りに行ってくれる店員を探してるんじゃが、まだみつからんのじゃ。
そのことを言うたら、それはどこの山だと訊くんで…」
「教えたのか!?」
フレイザーは身を乗り出し、店主はフレイザーの気迫にたじろいで後ずさりした。
「た、確かに教えたのは教えたが…」
「まさか、あいつ…」
「まさかって……あの子が薬草を採りに行ったとでも言うのか?
そんなことはなかろう。
第一、あの子にはどれがその薬草かわからんじゃろうし、あの山には魔物が出ることも言うたんじゃぞ。
そんな所へ行く筈が…」
「どこなんだ!
その山は!」
フレイザーは苛立ち、力一杯カウンターを叩いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる