夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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ポーリシアの老女

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ジェイコブが願い石を見たのは、父親が亡くなり、サンドラが町を離れる少し前のことだったという。
それは水のように透き通った赤っぽいもので、見た目で感じるよりもずしりと重かったのが印象的だったとジェイコブは話した。



 「爺さんは年はとってるが、ボケた様子はなかった。
 願い石の特徴もあってるし、きっと本物だな。」

 「そうだよなぁ…
あとは、エリオットがどこまでうまくやれるか、だな…」

 「そういうこと…
それと、それが双子石はどうかってことだな…」

 「……ジャック…もしも、それが願い石だったら、やっぱりおまえはあの願いを…」

 心配そうにジャックをみつめるフレイザーの視線を逸らし、ジャックは口元だけで小さく笑った。



 「あぁ…
俺の気持ちは変わらない…」

 「ジャック…そのことなんだが……」

 「フレイザー…」

 話しかけたフレイザーの言葉を、ジャックが素早く遮った。



 「俺の願いは変わらない…
だけど、今回のはダルシャかあんたが使うんだ。
 俺は…そんなに厚かましくないぜ。
……石を使うのは最後で良い。」

 「そ、そうか…
ありがとう、ジャック。」



すぐにはジャックが願いをかけるつもりがないことを知り、ほっと胸を撫で下ろしたフレイザーだが、彼にはおそらくそれが双子石の方だということがわかっていた。



 (赤い硝子玉は俺達がこの世界に来るために使った石…
だから、きっと今回も双子石だ。
だとしたら、願いが叶う石があるのはこの先の大陸のどちらかということになる。
だけど、双子石は俺達が元の世界に戻るために必要になる大切なものだから、なんとしても手に入れなきゃならない。
……エリオットの奴……大丈夫かなぁ…?)



フレイザーはエリオットの顔を頭の中に描きながら、今後の事に期待と不安を募らせた。

 
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