夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
499 / 802
ポーリシアの老女

84

しおりを挟む




 「あんたって子は……どこまで責任感が強いんだ。
そんなの、悪いのは相手の方じゃないか!
あんたのしたことは誉められこそすれ、咎められるようなことじゃないよ。」

エリオットの話を聞いたサンドラは、テーブルを叩き憤りを顕わにした。



 「ボクの仲間もおばあさんと同じように言ってくれた…
でも……」

エリオットは、口篭もりそのまま深く俯く。



 「あんたこそ、逆の立場を考えてごらんよ。
これが、あんたの仲間の立場だったらどうだい?
その人は命を救ってもらってあんたにとても感謝してるのに、あんたがそのことで苦しんでいることを知ったら……仲間はどんな気持ちになるだろうね?
どれほど、あんたのしたことは正しいことだ、悪いのは相手の方なんだって言っても聞き入れず、ずっとそのことを悔やんでいたら……
きっと、その人もあんたと同じように苦しむんじゃないだろうか?」

 「そりゃあ……そうだけど……でも……」

 「でもじゃないよ!
 昨夜、私にあんな偉そうなことを言ったくせに、あんたも私と同じように自ら罰を欲っしてる。
……そんなのは駄目だったんじゃないのかい?
あんた、昨夜確かにそう言ったね?
……エリオット……どうだい?これを機会に一緒にやめようじゃないか。
 自分に罰を課するのはもうここらできっぱりやめようよ。
……きっと、そんなことは自分でしちゃいけなかったんだ。
 神様に、お任せすべきことなんだよ、きっと……」

 「神様に……」



それですぐにエリオットの気持ちが変わったわけではなかった。
だが、サンドラの言葉は深くエリオットの心に残り、何か小さな変化が起こったことをエリオットは感じていた。

しおりを挟む

処理中です...