夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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石の巫女の護り人

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「で…でも、俺達は大人数だ。
イリヤの家ならともかく、居候させてもらってる家に皆で押しかけるなんてこととても……」

 「そんなことなら大丈夫だよ。
そこはサンドラっていうおばあさんの家なんだけど、おばあさんはずっと一人暮らしだったんだ。
だから、ボクが行った時もすごく喜んでくれたし……あ、ボクもしばらくそこに住まわせてもらってたんです。
イリヤが来た時も喜んでくれた。
おばあさんは足もちょっと悪いし、一人では不安もあっただろうし寂しかったんだと思います。
 今は幼馴染みの所ジェイコブさんって人も一緒に暮らしてるけど、二人共、家族がいないから子供達が行ったらきっとますます喜んでくれると思うんです。」

 「だけど、そんな厚かましいこと……」

アンディは、ゆっくりと頭を振り歯切れの悪い返事を返す。



 「きついことを言うようですが、アンディさん……体裁を考えている場合でしょうか?」

ダルシャの言葉に、アンディは唇を噛み締め何かを考えるように黙りこむ。



 「おやじさん……
俺はスラムで生まれて、すっとそこで育った。
そりゃあ、俺の生まれた場所に比べればここはまだずっとマシだけど……
貧乏っていうのは、酷く惨めで不安なもんだ。
そのせいで、俺はすっかりひねくれた人間になっちまった。
いつも誰かを妬んで恨んで……
だから、俺は将来子供が出来たら絶対に貧しい暮らしはさせたくないと思ってる。
 頼むよ、おやじさん……あいつらのためにもぜひそうしてやってくれよ。」

 「アンディさん、ずっとじゃなくて構わないのです。
なんとか身が立つようになるまでの間だけ、サンドラさんに甘えさせてもらえば良いじゃないですか。」

 皆が見守る中、アンディは腕を組み、頭を掻いたり首をひねったりしながら落ち着きのない様子を見せ、彼が迷っていることは誰の目にも明らかだった。



 「おじさん……」

 「……そうだな。
そうしてもらえれば、確かに助かる。
いや……そうでもしなけりゃ、今のこの時期を乗り越えられそうにない……」

 痺れを切らしたエリオットが声をかけたのと同時に、アンディは独り言のようにそう話しながら、小さく頷いた。
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