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故郷へ
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*
「ダルシャ…昨夜、なにかあったの?」
「母上……それが、その……
少々、父上を怒らせるようなことになったのですが、今夜、もう一度話し合ってみますから、心配はいりませんよ。」
「そう、それなら良かったわ。」
次の朝のアンドリューの機嫌の悪さは、妻のハリエットだけではなく、他の誰にでもわかるほどのものだった。
ほとんど何もしゃべらず、ただ黙々と料理を口に運び、特にダルシャとは一度も視線を合わせなかった。
「じゃあ、行こうか。」
セリナとエリオット、リュシーとダルシャの四人は、朝食を済ませると、馬車に乗り、どこかへ出かけた。
*
「ラスター……」
「親父……」
朝食を済ませたラスターが割り当てられた部屋で寛いでいると、不意に扉が開き、杖をつきながらイリアスが姿を現した。
「部屋に入る時はノックするもんだ。
そんなことも知らないんじゃ、こんな格式高い屋敷でやっていけないぜ。」
「……育ちも生まれも悪いもんでな。」
イリアスは、そう言いながら、長椅子にゆっくりと腰を降ろした。
「……足の具合が悪いのか?」
「足だけじゃねぇ…どこもかしこもガタが来てる。
おそらく……俺はもってもあと数年だな。」
「ふん、殺しても死なないあんたが良く言うぜ。」
ラスターの悪態に、イリアスは苦笑する。
「スラムで無茶をやりすぎた。
おまえがいなくなってからは特にそうだった。
ただ、毎日死ぬことだけを考えて…でも、死ぬ勇気がないもんだから、毒薬代わりに酒ばっかり飲んでた。
それも、まともな酒じゃねぇから、本当に毒薬みたいなもんだった。」
「モーリスから買ったのか?
あいつの作ってる酒は……」
「あぁ、言われなくてもわかってる。
あの酒のせいで死んだ奴を何人も知ってるからな。
だから、それを飲んだんだ。
……こんなことになるとわかってたら、そんなことはしなかったんだけどな…
俺は、本当に馬鹿だ。大馬鹿だ。
おまえにも迷惑ばかりかけてしまったな…本当にすまなかった。」
「だから、そういうことは言うなって言ってんだろ!」
「……死んじまったら言えねぇからな。
だから、頼む…俺の話を聞いてくれ。」
そう言いながら、イリアスはリュシーとの出会いからを話し始めた。
「ダルシャ…昨夜、なにかあったの?」
「母上……それが、その……
少々、父上を怒らせるようなことになったのですが、今夜、もう一度話し合ってみますから、心配はいりませんよ。」
「そう、それなら良かったわ。」
次の朝のアンドリューの機嫌の悪さは、妻のハリエットだけではなく、他の誰にでもわかるほどのものだった。
ほとんど何もしゃべらず、ただ黙々と料理を口に運び、特にダルシャとは一度も視線を合わせなかった。
「じゃあ、行こうか。」
セリナとエリオット、リュシーとダルシャの四人は、朝食を済ませると、馬車に乗り、どこかへ出かけた。
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「ラスター……」
「親父……」
朝食を済ませたラスターが割り当てられた部屋で寛いでいると、不意に扉が開き、杖をつきながらイリアスが姿を現した。
「部屋に入る時はノックするもんだ。
そんなことも知らないんじゃ、こんな格式高い屋敷でやっていけないぜ。」
「……育ちも生まれも悪いもんでな。」
イリアスは、そう言いながら、長椅子にゆっくりと腰を降ろした。
「……足の具合が悪いのか?」
「足だけじゃねぇ…どこもかしこもガタが来てる。
おそらく……俺はもってもあと数年だな。」
「ふん、殺しても死なないあんたが良く言うぜ。」
ラスターの悪態に、イリアスは苦笑する。
「スラムで無茶をやりすぎた。
おまえがいなくなってからは特にそうだった。
ただ、毎日死ぬことだけを考えて…でも、死ぬ勇気がないもんだから、毒薬代わりに酒ばっかり飲んでた。
それも、まともな酒じゃねぇから、本当に毒薬みたいなもんだった。」
「モーリスから買ったのか?
あいつの作ってる酒は……」
「あぁ、言われなくてもわかってる。
あの酒のせいで死んだ奴を何人も知ってるからな。
だから、それを飲んだんだ。
……こんなことになるとわかってたら、そんなことはしなかったんだけどな…
俺は、本当に馬鹿だ。大馬鹿だ。
おまえにも迷惑ばかりかけてしまったな…本当にすまなかった。」
「だから、そういうことは言うなって言ってんだろ!」
「……死んじまったら言えねぇからな。
だから、頼む…俺の話を聞いてくれ。」
そう言いながら、イリアスはリュシーとの出会いからを話し始めた。
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