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014:僕は手を振った
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(良い気分だ…)
母さんはまだ眠っている。
まだ夜明けだというのに、山のひんやりとした空気のせいなのか、僕はえらく早くに目が覚めてしまった。
丘の上に腰を降ろし、少しずつ顔をのぞかせ始めた太陽を眺めていた。
太陽の動きと共に、空が色が変えていく…
「あ、あれ…!?」
なにかおかしなものが見えた気がして、僕は立ちあがった。
(……なんだ、鳥か……)
鷹のような大きな鳥に僕は手を振った。
「シンファ…早起きなんて珍しいわね。」
「あ、母さん……なんだかわからないけど、今日は早くに目が覚めたんだ。」
「家では、私が起こさないと起きられないのにおかしなものね。」
「野宿には慣れた筈だったんだけどなぁ…」
「村に着くまでにはもっと慣れるわよ。
あ……シンファ、背中が草だらけじゃない。」
母さんは僕の背中をぱんぱんと叩いてくれた。
僕はもう立派な大人だっていうのに、母さんはまだこんな風に僕のことを子供扱いする。
やれやれと思いながらも、そういやな気もしない。
いくつになっても、僕は母さんの息子で、母さんは僕の母親だってことか……
「なぁに、シンファ…
思い出し笑い?」
「そうじゃないよ。
ただ、あんまり綺麗な夜明けだから…ちょっと嬉しくなっただけ。」
本当のことは言い辛いから、僕はそんなことを言って誤魔化した。
「……そうね。
本当に綺麗な夜明け……
早起きした甲斐があったわね。」
僕達は並んで空を見上げた。
さっきの鳥はもうどこかに飛んで行ってしまって、どこにも見えない。
「母さんの故郷へはまだずいぶんかかるんだよね?」
「まぁね…でも、もう半分以上は進んだわ。
あと三分の一くらいかしら?」
「……空が飛べたら、もっとずっと早くに着けるだろうにね。」
「あいにく、私にもあなたにも翼がないんですもの。
歩くしかないわね。
さ、とにかく、何か食べましょう!
今日も精一杯歩けるようにね。」
母さんは僕の背中を優しく叩き、にっこりと微笑んだ。
(良い気分だ…)
母さんはまだ眠っている。
まだ夜明けだというのに、山のひんやりとした空気のせいなのか、僕はえらく早くに目が覚めてしまった。
丘の上に腰を降ろし、少しずつ顔をのぞかせ始めた太陽を眺めていた。
太陽の動きと共に、空が色が変えていく…
「あ、あれ…!?」
なにかおかしなものが見えた気がして、僕は立ちあがった。
(……なんだ、鳥か……)
鷹のような大きな鳥に僕は手を振った。
「シンファ…早起きなんて珍しいわね。」
「あ、母さん……なんだかわからないけど、今日は早くに目が覚めたんだ。」
「家では、私が起こさないと起きられないのにおかしなものね。」
「野宿には慣れた筈だったんだけどなぁ…」
「村に着くまでにはもっと慣れるわよ。
あ……シンファ、背中が草だらけじゃない。」
母さんは僕の背中をぱんぱんと叩いてくれた。
僕はもう立派な大人だっていうのに、母さんはまだこんな風に僕のことを子供扱いする。
やれやれと思いながらも、そういやな気もしない。
いくつになっても、僕は母さんの息子で、母さんは僕の母親だってことか……
「なぁに、シンファ…
思い出し笑い?」
「そうじゃないよ。
ただ、あんまり綺麗な夜明けだから…ちょっと嬉しくなっただけ。」
本当のことは言い辛いから、僕はそんなことを言って誤魔化した。
「……そうね。
本当に綺麗な夜明け……
早起きした甲斐があったわね。」
僕達は並んで空を見上げた。
さっきの鳥はもうどこかに飛んで行ってしまって、どこにも見えない。
「母さんの故郷へはまだずいぶんかかるんだよね?」
「まぁね…でも、もう半分以上は進んだわ。
あと三分の一くらいかしら?」
「……空が飛べたら、もっとずっと早くに着けるだろうにね。」
「あいにく、私にもあなたにも翼がないんですもの。
歩くしかないわね。
さ、とにかく、何か食べましょう!
今日も精一杯歩けるようにね。」
母さんは僕の背中を優しく叩き、にっこりと微笑んだ。
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