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「おはよう。」

「おはようございます。」

「昨日は爆睡だったね。」

「はい、ずいぶん歩きましたからね。」

柚希さんは朝から機嫌が良さそうだった。
でも、その真意は私には皆目わからない。



「柚希、そろそろ帰るんか?」

「あぁ…あと少しいさせてもらいます。」

「そうか。そらよかった。
おまえもなかなかゆっくり出来ることがないやろから、今のうちにのんびりしたらええ。」

「……はい。」

お父さんも、他の家族も柚希さんがこっちにいることを歓迎してる様子だった。
私はただのおまけって感じ!?
特に私には誰も関心を示さない。
逆に言えば、特別嫌われてるわけではないんだから、まぁ、良しとしなくちゃね。







「僕は最初のところが1番気に入ったよ。」

散歩の途中で、柚希さんが急に呟いた。



「え?」

「ほら、バス停近くの…」

えっ!物件の話!?
そんなこと、考えてもいなかったから、びっくりした。



「あの近くに高校があるって言ってたじゃない。
それって、僕の通ってた高校なんだよ。
だからあの辺りのことは割と知ってるし、広さ的にも良いと思うんだ。
二階が住居なら、通勤の手間もかからないし。」
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