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ストラップ side 雪彦

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昼休みにあゆさんからLINEが来たけど、特に昨夜のことについては言及されることはなかったからほっとした。
でも、ちょっと不思議だ。
 平川さんは、あゆさんにも昨夜の喫茶店のことは話してなさそうだ。
やっぱりそういうことは言わない方が良いって思われたのかな?



 昼ご飯を終えて戻って来ると、相川の機嫌もすこぶる良かった。
きっと、平川さんから、返信でも来たんだろう。
あんなに機嫌が良いっていうことは、多分、平川さんは相川にも昨夜のことを話してないんじゃないだろうか?
 相川は、けっこう独占欲が強そうだから、僕が平川さんと二人で茶店に行ったなんて知ったら、何か言って来そうだし。



 *



 「お疲れさん!」

 「あぁ、お疲れさん。」



 仕事が終わっても、相川は特に何も言って来なかった。
 機嫌も良さそうだったから、僕はほっと胸を撫でおろした。



 (さて、と……)



 今日は、割と早めに仕事が終わった。
なんとなく、すぐには帰りたくなくて、会社の近くの店を冷やかすことにした。



 夕方とはいえ、どの店にもまだ煌々とした明かりが灯り、様々なものが並んでいる。



 (あ……可愛いな……)



ショウウィンドウに並べられたクマのぬいぐるみに、ふと、心を惹かれた。
なぜだか、そのクマを抱いている平川さんの姿が目に浮かんだ。
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