22 / 198
我が家へ…
1
しおりを挟む
(…家を出て、ここまで来るのに一体どのくらいの歳月が経っただろうか…)
当然、帰りにも同じような日数がかかると思っていたが、レヴがヴェールにだいたいの場所を伝えると意外にもここからそんなに遠くないことがわかった。
「そうか…だいぶ遠くまで来てしまったと思っていたが、そうでもなかったんだな。」
「最初から行き先が決まっていればどこへ行くのも早いものですよ。
この旅は行き先も手探り状態でしたからね。」
「そうだったな。」
未だすべてが解決したというわけではないが、ここまで来る時とは精神的な部分もかなり違っている。
今まで三人がずっと抱えていた不安や恐れは、前向きなものへと変わっていた。
これからもまだ困難なことはあるだろうが、いつの間にかそういうものに立ち向かっていく強さや知恵といったようなものが皆の身に付いたせいなのかもしれない。
*
三人はいつものように、夜明けと共に起き、宿を発った。
「そういえば、あたし達が出発する時って、たいてい良い天気だね!」
「そうだな。
この中に、脳天気な者がいるおかげかもしれないな。」
「なんだよ、レヴ!
それ、もしかして、あたしのことかい!?」
「さぁな…」
いつものようにくだらない会話をしながら、三人の旅は始まった。
レヴにとっては旅というよりは帰郷なのだが…
ヴェールの道案内のおかげで屋敷へは思ったよりもずっと順調に進むことが出来た。
さらに、来た時とは違うルートを辿って進んだため、また新たな旅をしているような新鮮な気分を味わった。
まさに、快適な旅だったのだ。
「ヴェール、君のおかげで本当に助かっている。
君の方向感覚はたいしたものだな。
私は今、自分がどのあたりにいるのかさえ、皆目わかってはいない。」
「もうずいぶんと近付いて来ていると思いますよ。
明日あたり、暗き森のそばを通ることになります。」
「もうそんなに…?
……暗き森か……当然、迂回して行くのだろう?」
「……そうですね。
実を言うと、私としても複雑な気持ちなのです。
立ち寄りたい気持ち半分、近付きたくない気持ちも半分…そんな所です。」
「私達だけなら良いのだが、ジネットさんのことを考えると、やはり避けた方が良いのではないだろうか?」
「私もそう思います。
あの森は私がいなくなってからはおそらく通っている人もほとんどいないと思います。
ですから、迂回した方がジネットさんも自然と思われるでしょうからね。」
「そうだな。
私達もあの森は通らず、迂回して進んで来たことにしておこう。」
当然、帰りにも同じような日数がかかると思っていたが、レヴがヴェールにだいたいの場所を伝えると意外にもここからそんなに遠くないことがわかった。
「そうか…だいぶ遠くまで来てしまったと思っていたが、そうでもなかったんだな。」
「最初から行き先が決まっていればどこへ行くのも早いものですよ。
この旅は行き先も手探り状態でしたからね。」
「そうだったな。」
未だすべてが解決したというわけではないが、ここまで来る時とは精神的な部分もかなり違っている。
今まで三人がずっと抱えていた不安や恐れは、前向きなものへと変わっていた。
これからもまだ困難なことはあるだろうが、いつの間にかそういうものに立ち向かっていく強さや知恵といったようなものが皆の身に付いたせいなのかもしれない。
*
三人はいつものように、夜明けと共に起き、宿を発った。
「そういえば、あたし達が出発する時って、たいてい良い天気だね!」
「そうだな。
この中に、脳天気な者がいるおかげかもしれないな。」
「なんだよ、レヴ!
それ、もしかして、あたしのことかい!?」
「さぁな…」
いつものようにくだらない会話をしながら、三人の旅は始まった。
レヴにとっては旅というよりは帰郷なのだが…
ヴェールの道案内のおかげで屋敷へは思ったよりもずっと順調に進むことが出来た。
さらに、来た時とは違うルートを辿って進んだため、また新たな旅をしているような新鮮な気分を味わった。
まさに、快適な旅だったのだ。
「ヴェール、君のおかげで本当に助かっている。
君の方向感覚はたいしたものだな。
私は今、自分がどのあたりにいるのかさえ、皆目わかってはいない。」
「もうずいぶんと近付いて来ていると思いますよ。
明日あたり、暗き森のそばを通ることになります。」
「もうそんなに…?
……暗き森か……当然、迂回して行くのだろう?」
「……そうですね。
実を言うと、私としても複雑な気持ちなのです。
立ち寄りたい気持ち半分、近付きたくない気持ちも半分…そんな所です。」
「私達だけなら良いのだが、ジネットさんのことを考えると、やはり避けた方が良いのではないだろうか?」
「私もそう思います。
あの森は私がいなくなってからはおそらく通っている人もほとんどいないと思います。
ですから、迂回した方がジネットさんも自然と思われるでしょうからね。」
「そうだな。
私達もあの森は通らず、迂回して進んで来たことにしておこう。」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!
出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた
黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆
毎日朝7時更新!
「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」
過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。
絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!?
伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!?
追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
銀鷲と銀の腕章
河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。
仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。
意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。
全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる