118 / 198
想い出作り
32
しおりを挟む
エリサの話はこうだった。
荷物の準備が早めに出来てしまったので、エリサとリーズは裏山に散歩に出かけた。
その時、崖下に百合の花をみつけたリーズはそれを取ろうとし、そして崖から落ちたというのだ。
エリサは近隣の住人に助けを求め、リーズは今、その住人の所にいるという。
「そんな…リーズが……!!」
「レヴ、行くぞ!!」
レヴとフレデリックはエリサにその場所を聞き、馬を走らせた。
エリサとヴェールは、馬車で向かう。
先に着いたフレデリックとレヴが見たものは、まさに今その命の灯火を消し去ろうとしている痛々しいリーズの姿だった…
「あの崖から落ちて助かった者はいない…
崖下はゴツゴツした岩だらけだからな。
たいていは、即死だ…
この娘さんはすぐに死ななかっただけでも奇跡だが…気の毒だが助かることはなかろう…
まだ若いのに…可哀想にな…」
「リーズ……!!!」
「レヴ、落ちつけ!」
リーズに取りすがるレヴを押し退け、フレデリックはリーズの身体を診察した。
「どうなんだ?!
フレデリック!!
助かるんだろ?
リーズは必ず助かるよな…!
助かると言ってくれ、フレデリック!!」
「レヴ……
出来る限りのことはする…
しかし……心の準備はしておけ…」
「フレデリック…!!」
やがて、ヴェールとエリサの乗った馬車が着いた。
「早く診療所へ!!」
馬車にリーズを運び入れ、ヴェールはフレデリックの乗ってきた馬に乗り、レヴと共に診療所へ向かった。
*
「レヴ、ちょっと来てくれ…」
「フレデリック、どうなんだ!
リーズは…リーズの容態は…」
「レヴ…今夜はリーズさんのそばにいてやれ…」
「もちろんそのつもりだが…」
「リーズさんは…おそらく…明日の朝まではもたん…」
「…え……フレデリック…
今、何と…?」
「レヴ……もうどうしようもない…」
「フレデリック…!」
レヴは病室に入った。
そこに横たわるリーズは至る所を白い包帯で巻かれ、すでに息をしていないようにも見えた…
「リーズ…なぜ、こんなことに…」
レヴは、リーズのその姿になす術なく立ち尽くした。
「リーズ様…!
レヴ様、本当に申し訳ありません!!
危ないからと私、ご注意したのですが…リーズ様は『大丈夫!』と笑ってらっしゃって…
そしたら突然木の杭が…
私がついていながらこんなことになってしまうなんて…レヴ様、本当に申し訳ありません…!!」
「…エリサさん…あなたのせいじゃない…
目に浮かぶようですよ…その時のリーズの様子が…」
「レヴ様……」
「どうか、休んでください。
あなたもお疲れになっているでしょう…」
「…では、私…ヴェール様と廊下のベンチにおりますので、なにかありましたらすぐにお呼びください…」
荷物の準備が早めに出来てしまったので、エリサとリーズは裏山に散歩に出かけた。
その時、崖下に百合の花をみつけたリーズはそれを取ろうとし、そして崖から落ちたというのだ。
エリサは近隣の住人に助けを求め、リーズは今、その住人の所にいるという。
「そんな…リーズが……!!」
「レヴ、行くぞ!!」
レヴとフレデリックはエリサにその場所を聞き、馬を走らせた。
エリサとヴェールは、馬車で向かう。
先に着いたフレデリックとレヴが見たものは、まさに今その命の灯火を消し去ろうとしている痛々しいリーズの姿だった…
「あの崖から落ちて助かった者はいない…
崖下はゴツゴツした岩だらけだからな。
たいていは、即死だ…
この娘さんはすぐに死ななかっただけでも奇跡だが…気の毒だが助かることはなかろう…
まだ若いのに…可哀想にな…」
「リーズ……!!!」
「レヴ、落ちつけ!」
リーズに取りすがるレヴを押し退け、フレデリックはリーズの身体を診察した。
「どうなんだ?!
フレデリック!!
助かるんだろ?
リーズは必ず助かるよな…!
助かると言ってくれ、フレデリック!!」
「レヴ……
出来る限りのことはする…
しかし……心の準備はしておけ…」
「フレデリック…!!」
やがて、ヴェールとエリサの乗った馬車が着いた。
「早く診療所へ!!」
馬車にリーズを運び入れ、ヴェールはフレデリックの乗ってきた馬に乗り、レヴと共に診療所へ向かった。
*
「レヴ、ちょっと来てくれ…」
「フレデリック、どうなんだ!
リーズは…リーズの容態は…」
「レヴ…今夜はリーズさんのそばにいてやれ…」
「もちろんそのつもりだが…」
「リーズさんは…おそらく…明日の朝まではもたん…」
「…え……フレデリック…
今、何と…?」
「レヴ……もうどうしようもない…」
「フレデリック…!」
レヴは病室に入った。
そこに横たわるリーズは至る所を白い包帯で巻かれ、すでに息をしていないようにも見えた…
「リーズ…なぜ、こんなことに…」
レヴは、リーズのその姿になす術なく立ち尽くした。
「リーズ様…!
レヴ様、本当に申し訳ありません!!
危ないからと私、ご注意したのですが…リーズ様は『大丈夫!』と笑ってらっしゃって…
そしたら突然木の杭が…
私がついていながらこんなことになってしまうなんて…レヴ様、本当に申し訳ありません…!!」
「…エリサさん…あなたのせいじゃない…
目に浮かぶようですよ…その時のリーズの様子が…」
「レヴ様……」
「どうか、休んでください。
あなたもお疲れになっているでしょう…」
「…では、私…ヴェール様と廊下のベンチにおりますので、なにかありましたらすぐにお呼びください…」
0
あなたにおすすめの小説
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
生贄公爵と蛇の王
荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。
「お願いします、私と結婚してください!」
「はあ?」
幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。
そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。
しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!
銀鷲と銀の腕章
河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。
仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。
意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。
全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる