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『だが、確かに不思議といえば不思議だな』

「は?」

『あの子と私は全くの初対面だ。
何の関わりもない。
あの子は、おまえのように石に特別関心が高いということもなさそうだった。
それでも、私の存在に気がついた…』

「お…おぅっ、多分、その通りだ。」

エレスは、優雅な動きで長椅子に腰を沈め、何かを思い出すような表情で目を細めた。



『おまえ達人間の本能というものは時に奇蹟のようなことを引き起こす…』

「奇蹟…?」

『そうだ、身体のどこかの機能が劣ると、それを補うように他のどこかが特別鋭敏になったりするという話を聞いたことはないか?
……イヴもおそらくそういう状態になっているのではあるまいか。
普通ならもっと他の部分が鋭くなるのだろうが、彼女はなぜか…一般とは違う部分が研ぎ澄まされてしまったのだろう…』

「なるほど…それで……って、本当にそんなことがあるのか!?」

『……さぁ、どうだろうな…しかし、今はそうとしか考えられん。』

その言葉に、ジュリアンは思わず舌を打つ。



「あ~あ、あの子も可哀想にな。
何の因果でこんな変なのの存在がわかるようになったんだか…」

『変なの…?
それは、私のことなのか?』

ジュリアンは、エレスの問いには返事をせず、その代わりに大きなあくびをする。



「あぁ…急に眠くなっちまった。」

質問の返事を誤魔化すためにジュリアンは大袈裟にそう言うと、目を閉じ、エレスに背中を向けた。



『……おい、それで明日はどうするんだ?』

「明日?う~ん、石の掘れそうな山はもう少し先に行かなきゃなさそうだから、明日はこの町を発つつもりだ。」

エレスがそれに対して何も言わないことを不審に感じ、ジュリアンが振り向くと、エレスの姿はすでに消えていた。



(なんだ?別に興味もないくせに、聞くだけ聞いて…やっぱり、変な奴だな…)

ジュリアンは、再び大きなあくびをすると、そのまま深い眠りに落ちた…
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