143 / 217
side シュウ
3
しおりを挟む
*
(準備OKなんだな?)
耳元で囁いた俺に、アキラは親指を立てて片目を瞑った。
慌しい三日間だったが、ついにここまで辿り着いた。
俺は、緊張と期待で高鳴る胸を押さえ、玄関の鍵を開け、ひかりを先にして歩かせる。
「あれ…?」
「何?」
ひかりが、リビングの扉の前で立ち止まった。
「これ…」
ひかりが指差したのは、黒い布だ。
リビングの扉が硝子作りだから、中が見えないようにしたんだろう。
「いいからいいから。」
ここは考える時間を与えてはいけないと、俺は片手でノブを回し、もう片方の手でひかりの背中を押し出した。
「おめでとう!」
扉を開けた途端、クラッカーの破裂音が連発して響き、色とりどりの紙吹雪が舞い踊った。
「わ…あ、あ……」
ひかりは、何が起こったのかよくわからない風で、ただ目を丸くして口までぽかんと開けていた。
それもそのはず、部屋は出掛ける前とはまるで違い、ピンクを基調に女の子の好きそうなレースやキラキラした硝子玉でとても可愛らしく飾りたてられていた。
その上、至る所に鮮やかな花が生けられ、クラッカーの火薬のにおいと同じ位に花の甘い香りが漂う。
あんな短い時間によくもここまで出来たものだと、俺はすっかり感心してしまった。
「ひかりさん、シュウ…さぁ、二人でこの紐を引っ張って!」
見上げればそこには大きなくす玉がぶら下がっていた。
ひかりに紐を手渡したここあちゃんは、どきっとするような露出の多い真っ赤なドレスを着ていた。
腰のあたりまで深いスリットが入り、少し動いただけで白い脚がちらりと見える。
(……目の毒だ…)
俺は、さっと目を逸らし、ひかりの顔をみつめた。
ひかりはまだ状況を理解出来ないらしく、心配そうな顔で俺をみつめる。
「良いか、じゃ、引っ張るぞ!」
ひかりはそれに小さく頷き、俺達はくす玉の紐を引いた。
「五周年、おめでとう!」
くす玉が割れた瞬間、飛び出たそのメッセージとどさっと音がする程の紙吹雪。
(こんなものまで作って…)
きっとタカ達も昨夜は徹夜だったに違いない。
そんなことを考えると、俺は胸が熱くなった。
「ありがとう、みんな!」
ひかりはそこに書かれたメッセージを見ても、まだよくわからない様子で、すがるような視線を俺に向けた。
(準備OKなんだな?)
耳元で囁いた俺に、アキラは親指を立てて片目を瞑った。
慌しい三日間だったが、ついにここまで辿り着いた。
俺は、緊張と期待で高鳴る胸を押さえ、玄関の鍵を開け、ひかりを先にして歩かせる。
「あれ…?」
「何?」
ひかりが、リビングの扉の前で立ち止まった。
「これ…」
ひかりが指差したのは、黒い布だ。
リビングの扉が硝子作りだから、中が見えないようにしたんだろう。
「いいからいいから。」
ここは考える時間を与えてはいけないと、俺は片手でノブを回し、もう片方の手でひかりの背中を押し出した。
「おめでとう!」
扉を開けた途端、クラッカーの破裂音が連発して響き、色とりどりの紙吹雪が舞い踊った。
「わ…あ、あ……」
ひかりは、何が起こったのかよくわからない風で、ただ目を丸くして口までぽかんと開けていた。
それもそのはず、部屋は出掛ける前とはまるで違い、ピンクを基調に女の子の好きそうなレースやキラキラした硝子玉でとても可愛らしく飾りたてられていた。
その上、至る所に鮮やかな花が生けられ、クラッカーの火薬のにおいと同じ位に花の甘い香りが漂う。
あんな短い時間によくもここまで出来たものだと、俺はすっかり感心してしまった。
「ひかりさん、シュウ…さぁ、二人でこの紐を引っ張って!」
見上げればそこには大きなくす玉がぶら下がっていた。
ひかりに紐を手渡したここあちゃんは、どきっとするような露出の多い真っ赤なドレスを着ていた。
腰のあたりまで深いスリットが入り、少し動いただけで白い脚がちらりと見える。
(……目の毒だ…)
俺は、さっと目を逸らし、ひかりの顔をみつめた。
ひかりはまだ状況を理解出来ないらしく、心配そうな顔で俺をみつめる。
「良いか、じゃ、引っ張るぞ!」
ひかりはそれに小さく頷き、俺達はくす玉の紐を引いた。
「五周年、おめでとう!」
くす玉が割れた瞬間、飛び出たそのメッセージとどさっと音がする程の紙吹雪。
(こんなものまで作って…)
きっとタカ達も昨夜は徹夜だったに違いない。
そんなことを考えると、俺は胸が熱くなった。
「ありがとう、みんな!」
ひかりはそこに書かれたメッセージを見ても、まだよくわからない様子で、すがるような視線を俺に向けた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる