1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)

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「本当にどうもありがとうございました。」

 私は精一杯の笑顔を浮かべ、そう言って、扉を閉めた。


お隣の山本さん…とっても良い人なんだけど、人見知りな私はやっぱりこういう付き合いは苦手だ。

とはいえ…感謝はしてる。
 近所付き合いも希薄になったこの時代に、山本さんはただ隣に住んでるってだけで私にとてもよくしてくれる。
 今日だって、旦那さんと栗拾いに行かれたとかで栗をこんなにたくさん下さった。
しかも、私が料理をあんまりしないってことを知ってるから、皮までむいてくれて…

(苦手だなんて言ったら罰があたるね。)



しかし、困った……
栗は好きだけど、これをどうやって食べたら良いのか…


最初に頭に浮かんだのは、栗ごはん。
 多分、お米と一緒に栗をぶちこんで焚いたら良いんだと思う。
でも、栗ごはんってなんか味気ない…何か一味足りないって言うのか……


(そうだ!)


 何も既成概念にとらわれることはないんだ。
 好きなものを入れて、私だけのニュー栗ごはんにすれば良い。
でも、何を入れたら……


栗…栗…栗……りんご……ん?


 「あっ!良いこと思いついた!」


 私はスーパーに向かって駆け出した。



 栗…りんご…ごま…ま……


そう、私はしりとり食材で栗ごはんを作ることを思いついたのだ!
りんごはカレーにも入れるくらいだし、ごまは何にでも合うし…
でも、「ま」はなににしよう?


あ!まぐろ…!
ツナは私の大好物だし、魚だから良いダシが出るはず!
 次は「ろ」か…



ろ…ろうそく…なんて食べられないし。
ロ●ソニン…は薬だし。
ろ…ろ…



結局、「ろ」は思いつかず、まぐろまでで終わることにした。
 私はてきぱきと買い物を済ませ、家路に着いた。



 (さて、と。)



 洗った米の中に、私は小さく切ったりんごとごまとツナの缶詰を投入して、スイッチオン!
まぐろはけっこう高かったので、ツナ缶にした。



 (あとで、ブログにアップしようっと!)



 ***


 「うっぷ!」


なんだかおかしいと思ってたんだ。
 焚きあがるまでにおかしなにおいがしてたから…

出来上がった栗ごはんは、思い描いたものとは全く違う、なんとも言いようのないすごい代物で……


(ま、負けるもんか!
 絶対に、全部食べてやる!)


 食べ物を粗末にしたらいけない!
 私は鼻をつまみながら、ニュー栗ごはんを食べきった。


 *



 (はぁ…やっぱりすっきりしない。
 胃の薬、飲んどこう…)


 次の日の朝…私は苦い胃の薬をごくりと飲みほし…


なにがいけなかったんだろう?
ツナは大好きだし、他のもそこそこ好きなのに…
ツナが好きだからっていっぱい入れ過ぎたせいなのか?
それとも組み合わせの問題?
やっぱり、「ろ」の食材をもっとしっかり考えるべきだったか?
でも、「ろ」のつく食材なんて……



ろ……ろ……老婆……老婆?



 ***



 「おや、朱美じゃないか。珍しいね。」

 「へへっ。
おばあちゃん、ひさしぶり!」

 「どうかしたのかい?」

 電車に揺られること、約一時間。
あたりにはいつの間にか高いビルの姿は消え、たんぼや畑が広がっていた。



 「うん、栗ごはんが食べたくなってね……
でも、作り方がよくわからなくて。」

 私は、山本さんからもらった栗をおばあちゃんの前に差し出した。


 「そうかい。
わかった。
じゃあ、飛び切りうまいのを作ってやるよ。
さ、そんなとこに突っ立ってないで、早くおあがり。」

 「うん。」

 最初からこうすれば良かったんだ。
そうすれば、昨夜の栗ももっとおいしく食べられたのに。


 「朱美、柿、食べるかい?」

 「うん!食べる~!」

 広い庭の見える座敷に座ったまま、私は大きな声でそう答えた。


 ~fin.
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