1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)

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ひつじ

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「今年の冬は本当に寒いね。
 何か温かいもの食べようよ。」

 「うん、そうだね。」

 翼君と映画を見たその帰り、私達は小雪のちらつく町を駅に向かって歩いていた。




 「せんぱーい!翼せんぱーい!」

 突然聞こえて来た野太い声に振り向くと、そこには手を振りながら駆けて来る後藤さんの姿があった。




 「おーい!」

 翼君と私は立ち止まり、後藤さんに同じように大きく手を振る。




 「あ、カナさん、こんばんは。」

 「こんばんは、後藤さん。
お久しぶりですね。」

 「もしかして後藤も映画?」

 「そうなんですよ!本当に最高でしたね!
むちゃくちゃロマンチックで、感動しました。」

 後藤さんの手には恋愛ものの映画のパンフレットがしっかりと握られていた。
 私達が見たのはアクションもので、後藤さんが見た映画の隣の映画館でやってたやつだ。
 後藤さんはいかついその外見に似合わず、恋愛映画が好きみたい。




 「僕達今から食事に行く所だったんだけど、良かったら後藤も一緒に行く?」

 「はいっ!ぜひ!
あ、この近くにシチューのうまいレストランがあるんですが、そこどうですか?
スィーツもすっごく可愛くておいしいんです。」

 「シチューか…暖まりそうだね。
カナ、それで良い?」

 「うん、良いよ。」

 「じゃあ、後藤、そのお店に連れてってよ。」

 私達は、後藤さんおすすめのお店に連れていってもらうことになった。




 *




 「へぇ、小洒落た雰囲気のお店だね。
こんな所に、こんな素敵な店があるなんて全然知らなかったよ。」

 私達は、駅前のショッピングセンターから、10分程歩いた住宅街の中にある小さなレストランに入った。




 「俺、おいしい店を探すのが趣味なんで……
あ、それはそうと、先輩…今年は何か大きな目標とか決めました?」

 「え?いや…別に……」

 「だめじゃないですか!先輩、星男なんだから、今年は気合い入れてやったら大きな成果が出るかもしれませんよ。」



 (星男…?なんだろう?
 年男って言ったのかな?
でも、翼君は羊年じゃないし……)



 「あ、そっか~…そうだよね。
 僕、今年は星男だったんだ。
すっかり忘れてたよ…じゃあ、何か決めなきゃなぁ…う~ん、何が良いかなぁ…」




 翼君までがそんなことを言って、腕を組んで考え始めた。
 今、翼君は確かに星男って言った…年男ではなく星男って……
でも、星って……あ……




(もしかして、翼君が牡羊座だから…!?)



 干支と星座は関係ないんじゃ……と思いつつも、翼君は一生懸命考えてるし、とてもそんなことは言えなかった。



 「そういえば、先輩…
でっかい羊いるじゃないですか。
 最近、CМとかにもたまに出てる……」

 「あぁ、知ってる知ってる。」

 「俺、先週、あれを見に牧場に行って来たんですよ。
 本当に可愛かったですよ~!
もふもふしてて、触り心地が最高で……
あ、画像見て下さいよ!」



でっかい羊…??
 私は、翼君と一緒に、後藤さんのスマホの画面を見た。




 「あ、可愛い~!」

そこには、アルパカの首に手を回して満面の笑顔を浮かべる後藤さんが映っていた。




でっかい羊って…
ま、まさか、後藤さん…アルパカのことを羊だと思ってる……!?



 「この子達は、なんでこんなに首が長いんだろうね。
 他の羊は、短いのに…」

だから、翼君…それは羊じゃないってば。
 確か、アルパカはラクダの仲間だよ。
ほら、隣のテーブルの人がおかしな顔してこっちを見てるよ。




 「先輩、多分それはそいつらが寒い所に住んでるからじゃないですかね?
 高い所の木の葉を食べるためとかで、首が伸びたんじゃ…」

 「なるほど…そういうことかぁ…」

 翼君は大きく頷いて、どこか尊敬したような顔で後藤さんをみつめた。
そんな話は聞いたことないぞと思いながらも、今のこの状況でそんなことが言えるはずもなく……



「今度、ぜひ先輩も行ってみて下さいよ。
 本当に可愛いですから…」

 「そうだね、カナ…近いうちに行ってみようよ。」

 「う、うん、そうしよう。」

 「あ、でも、紙類は持って行かないように注意しなきゃ…」

 翼君は、後藤さんのパンフレットを見ながらそう言った。



なんで??と思った時、後藤さんが言った。



 「あ、そうですね。
こんなの持ってたら、食べられちゃいますね。」




いや、羊は紙は食べませんから…
翼君も後藤さんもヤギと間違えてるんじゃないですか。

 翼君のおとぼけはいつものことだけど、後藤さんまでがこんなにおとぼけ君だとは知らなかった。



 「お待たせしました。」

 私が内心あたふたしている時に、ようやく料理が運ばれて来た。



 「なんか変わってるね。」

 確かにそのシチューは、ブラウンでもホワイトでもない、これといった色を感じない素朴な印象のシチューだった。
なんとなく肉じゃがにも似てる。




 「素材の味がすごくよくわかるね。」

 味付けが薄いっていうのか、翼君の言う通り、本当に素材の味ばかりを感じる。
 野菜にこれほど味があったのかって思う程、本来の旨みを感じた。



 「これ、アイリッシュシチューっていうらしいですよ。
この肉、マトンなんですって。
あ、先輩…共食いですね!」

 「え……」

 翼君は、一瞬、その肉をじっとみつめて……
それから、何事もなかったように口の中に放り込んだ。
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