1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)

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焼き芋

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「さてと…一段落したことだし、お茶でも飲んで、少し休憩しようか。」

 「じゃあ、俺、何か買って来ます。」

 岡田が駆け出した。
 新人だけど、積極的でもあり、とても気が利く子だ。



 岡田の帰りを待つ間に、他の部下がコーヒーを淹れる。
しばらくすると、大きな紙袋を抱えた岡田が戻って来た。



 「お待たせ!」

デスクの上に、岡田が紙袋を置き、その袋を引き裂いた。



 「焼き芋って…マジかよ!」

 「暖まるし、芋にはけっこう栄養あるって聞いたことがあったので…」

さすがは岡田だ!
 私の大好物を知ってるなんて、あんたはエスパーか!



ひさしぶりの愛しの焼き芋との対面に心が躍っていた時、森下が口を挟んだ。



 「岡田…考えろよ。
 近藤チーフが焼き芋なんて食うはずないだろ?
ねぇ…近藤チーフ…?」

 「え…?そ、それは…」

そりゃあ、私は仕事が出来るよ。
だからこそ、このプロジェクトのチーフをやらせてもらってる。
 見た目もしゅっとしてる方だと思う。
だから、焼き芋とはイメージが合わないかもしれないけど、でも、好きなんだ…私は焼き芋がこの世で一番好きなんだ~!!



 「ほら見ろ、お前が変なもの買って来るから、チーフが困ってらっしゃるじゃないか。
ほら、近くにマカロンの店があんだろ?
あれ買って来い。」



なに?マカロンだと?
そんなものはいらん!
 私はこの芋で良いんだ!
 芋を食べさせてくれ!



 「はい…近藤チーフ、すみませんでした。」

 岡田は暗い顔をして、また外へ飛び出した。



 「おい、これはおまえらで始末しろ!」

 森下はそう言って、焼き芋の袋を若手の方へ押しやった。



 「ま、待て。」

 思わず止めてしまった私を、森下が怪訝な顔でみつめる。



 「近藤チーフ…何か?」

 「せ、せっかく岡田が良かれと思って買って来てくれたんじゃない。
 皆で食べようよ。」

 「チーフ、無理しないで下さい。」

 「いや、こんなにあるんだし…もったいないから。」

 私はそう言いながら、一本の芋を手に取った。



このことから、図らずも私の株はまた上がってしまった。
 部下想いの優しい上司だと。


 私はただ、芋が食べたかっただけなのに…


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