1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)

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主人公

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 「すみません。近藤さん…」

 「なんだ?」

 稽古の合間に、小林が俺の所にやって来た。
 話したくもなかったが、かといって無視するわけにもいかない。
 俺は平静を装った。



 「このシーンなんですけど…」

 小林は台本を俺に見せた。
 挫折した主人公が、悔しさをにじませ、海に向かって叫ぶシーンだ。



 「これがどうしたんだ?」

 「どうもうまくいかないんです。」

 「やってみろよ。」

 小林は、言われた通りに演技をした。



 「もっと腹から声を出さなきゃな。
 瞬は、自分自身のふがいなさに絶望してるんだ。
もっと悔しさを前面に出すんだ。」

 「近藤さんならどんな風に演じますか?」

 「そうだな…俺なら……」

いまだに納得の出来ない小林への妬みを込めて、俺は腹の底から悔しさを表現した。知らないうちに、俺の瞳からは涙まで流れていた。



 「すごい……!さすがは近藤さんですね!」

 小林は心底感動したのか、顔を上気させ拳を握りしめた。
なんだ、けっこう素直な良いやつじゃないか…
我ながら単純だと思うけど、演技を褒められ、急に小林への印象が変わってしまった。



 「それじゃあ、このシーンは…」

 俺を慕ってくる小林がなんとなく可愛く感じられた。



 *



 「それじゃあ、シーン132いきまーす!」



 「ばかやろーーーー!!」

 小林が海に向かって叫ぶシーンは、ずいぶんと良い感じになっていた。
 俺のアドバイスを忠実に守ってる。



 頬を撫でる風が心地良い。
 俺の心の中のもやもやしたものも、なんだかさっぱり吹き飛んでしまったような気がした。

 
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