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雨音レストラン
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(馬鹿だな…)
愚かな俺自身に、憐憫の溜息がこぼれた。
窓の外は雨…
狭い坪庭には紫陽花が、毎日のように降り続く雨を喜んでいるように生き生きと花を咲かせている。
ここは、俺と美香の特等席。
初めてこのレストランに来たのも、今日みたいな雨の日だった。
美香はこの席をとても気に入っていた。
じっと目を閉じて、雨音に耳を傾けていると、とても落ち着く…なんて言ってた。
俺達はこの店で何度も一緒に食事をし…
彼女にプロポーズをしたのもここだった。
俺の渡した指輪を、美香は涙を浮かべて受け取ってくれた。
結婚しても一緒に来ようと約束した。
その時は、俺達だけじゃなく、子供達も一緒かもしれない…俺はそんなことを考えていた。
だけど……
それは、俺の妄想でしかなかった。
美香は突然、俺の前から姿を消した。
俺達はうまくいってると思ってた。
思い当たることなんて何もなかったのは、俺が無神経だっただけなのか?
俺は美香に捨てられた……それでも、俺は美香を忘れられず、ずっと彼女を探し続けた。
この店にも何度か来たが、美香がここに来たことはなかったという。
六年の歳月が長いのか短いのかはわからない。
その頃、俺は知り合って半年の弥生と結婚した。
子供が出来たことで背中を押された結婚だった。
結婚して半年後に長男が生まれた。
弥生はおおざっぱだが、明るい女だ。
次の年には次男が生まれて、俺の結婚生活はそれなりに幸せだった。
だけど、俺の心の片隅にはいまだに美香がいる。
それはもう愛情というよりは執着に近いものかもしれない。
理由も告げられず、突然捨てられたことへの憤りのようなものもあるのかもしれない。
だからこそ、あれから三十年近く経った今、俺は突然こんな所に来てしまったのだろう。
降り続く雨を見ていたら、俺はたまらなくなって家を出て来ていた。
なぜ、今日に限ってそんな衝動的な想いにかられたのかはわからなかったけど…
ここのマスターはすでに代替わりをしていた。
今のマスターは当然俺のことなんて知らない。
代替わりをしてなんとか続けてきたが、最近の不況には勝てず、ついに今年で閉店するのだとついさっきおしゃべりな店員から聞いたところだ。
(これで俺も美香のことを忘れられるかな…?)
俺は目を閉じ、静かな雨音に耳を傾けた。
美香にお別れをいう潮時が来たのかもしれない。
そのために、俺は今日ここに呼ばれたのかもしれない。
(さようなら、美香…俺、もうおまえのことは忘れるよ…)
そう思った時…心の中の美香が、ふと笑ったような気がした。
~fin.
愚かな俺自身に、憐憫の溜息がこぼれた。
窓の外は雨…
狭い坪庭には紫陽花が、毎日のように降り続く雨を喜んでいるように生き生きと花を咲かせている。
ここは、俺と美香の特等席。
初めてこのレストランに来たのも、今日みたいな雨の日だった。
美香はこの席をとても気に入っていた。
じっと目を閉じて、雨音に耳を傾けていると、とても落ち着く…なんて言ってた。
俺達はこの店で何度も一緒に食事をし…
彼女にプロポーズをしたのもここだった。
俺の渡した指輪を、美香は涙を浮かべて受け取ってくれた。
結婚しても一緒に来ようと約束した。
その時は、俺達だけじゃなく、子供達も一緒かもしれない…俺はそんなことを考えていた。
だけど……
それは、俺の妄想でしかなかった。
美香は突然、俺の前から姿を消した。
俺達はうまくいってると思ってた。
思い当たることなんて何もなかったのは、俺が無神経だっただけなのか?
俺は美香に捨てられた……それでも、俺は美香を忘れられず、ずっと彼女を探し続けた。
この店にも何度か来たが、美香がここに来たことはなかったという。
六年の歳月が長いのか短いのかはわからない。
その頃、俺は知り合って半年の弥生と結婚した。
子供が出来たことで背中を押された結婚だった。
結婚して半年後に長男が生まれた。
弥生はおおざっぱだが、明るい女だ。
次の年には次男が生まれて、俺の結婚生活はそれなりに幸せだった。
だけど、俺の心の片隅にはいまだに美香がいる。
それはもう愛情というよりは執着に近いものかもしれない。
理由も告げられず、突然捨てられたことへの憤りのようなものもあるのかもしれない。
だからこそ、あれから三十年近く経った今、俺は突然こんな所に来てしまったのだろう。
降り続く雨を見ていたら、俺はたまらなくなって家を出て来ていた。
なぜ、今日に限ってそんな衝動的な想いにかられたのかはわからなかったけど…
ここのマスターはすでに代替わりをしていた。
今のマスターは当然俺のことなんて知らない。
代替わりをしてなんとか続けてきたが、最近の不況には勝てず、ついに今年で閉店するのだとついさっきおしゃべりな店員から聞いたところだ。
(これで俺も美香のことを忘れられるかな…?)
俺は目を閉じ、静かな雨音に耳を傾けた。
美香にお別れをいう潮時が来たのかもしれない。
そのために、俺は今日ここに呼ばれたのかもしれない。
(さようなら、美香…俺、もうおまえのことは忘れるよ…)
そう思った時…心の中の美香が、ふと笑ったような気がした。
~fin.
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