1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)

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願いの社

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「もし…そこのお嬢さん…」

 「は、はい…」

 不意にかけられた声に振り返ると、そこには小柄なおばあさんがいた。


 「迷われたのですかな?」

 「……はい。実はそうなんです。」

 「わしは、村へ戻る道を知っています。
 今なら、お連れすることも出来ますが…どうなさいますかな?」


この山に入って、私はもう五日もさ迷っていた。
まさかこんなことになるとは思っていなかったから、食べるものはちょっとしか持っていなかったし、水ももうなくなっていた。
 幸い、沢をみつけたけど、そんな水を飲んでお腹を壊したらどうしようって一日は我慢して…
でも、喉の渇きには耐えられずに飲んでしまった。
お腹も減ってるし、酷く疲れてもいる…



帰りたい…



だけど……
ここまで来て、帰ることは出来ない。



 「私は……帰りません……」

 自分の意志を確認するように、ゆっくりと答えた。



 「本当に良いんですかな?」

 「……はい。」

 「このままではあなたは死ぬかもしれない。
あの男にそこまでする価値があるんでしょうかな。」

 「えっ!?」

 私は心の中を見透かされたような気がして、老婆のしわがれた瞳をじっとみつめた。



そう…私がこの山に来たのは、テルのことをお願いするため。
 彼は、今、急な病で生死の淵をさ迷っている。



そんなこと、気に病むことはないのかもしれない。
 彼はもう私の彼氏ではないのだから…



彼とは五年の付き合いになる。
 私達の仲は順調で、いずれは結婚するものと信じていた。



だけど、その想いはいとも簡単に裏切られた。
 部長の娘との縁談が持ち上がり、私はまるで紙屑のように捨てられた。



 心が砕け、彼を恨み、涙に暮れた日々…
そんな最中、彼が倒れたことを知った。


 友人は笑った。
 私を捨てたから天罰が下ったんだって。
でも、私は笑えなかった。
あんなに憎んだはずなのに、彼のことが心配でたまらなかった。
 彼の病状は重篤で、生きることは絶望的だと言われている。
だけど、彼はまだ三十代…死ぬにはあまりにも早過ぎる…



そんな時、私の脳裏に浮かんだのは、ある都市伝説だった。
ある山の中にある社に行ってお願いすれば、どんな願いも聞いてもらえるというものだ。
ただ、その社はなかなかたどり着くことが出来ないと…
それだけじゃない。山に向かった者の中には行方知れずになった者もいるとか、そんな噂が実しやかに流れていた。
 山の場所はネットですぐにわかった。
もちろん、半信半疑だったけど、私は藁にもすがる想いだったのだ。



 山に入ってから、私はその都市伝説に信ぴょう性を感じ始めた。
なぜならば、その山はさほど高くもなければ大きな山でもないのに、入ってすぐに道を見失ってしまったから。
 私は方向音痴ではないのに、すぐに方向がわからなくなってしまう。
 歩いていても何かがおかしいことをひしひしと感じた。
ここは、普通の山ではない…得体の知れない薄気味の悪さを感じながら、私は社を探して山をさ迷い続けた。



 「帰るなら今…
今を逃したら、帰れないかもしれませんよ…」



おばあさんと喋っていたら、なんだか気持ちが揺らいでくる。



 「わ…私は…帰りません!」

 揺らぐ気持ちを振り払うようにそう言って、私はその場から逃げ出した。 
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