1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)

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うさぎ

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(馬鹿だ…私は…)



どうやってここまで帰って来たのか、全く記憶がない。 
 多分、本能のようなもので辿り着いたのだろう。 
 最寄り駅から家までは約10分…
普段なら、なんてことない道程だけど、 
 私にはそれが果てしなく長い距離に感じられた。



 足に力が入らず、フラフラしながら駅裏の公園のベンチに座った。 
カエデの木が周囲に植えられた小さな公園だ。



ついさっきのことが思い出されて、涙が込み上げた。 
 幸い、周りには誰もいなかったけど、子供じゃないんだ、泣いたりなんて出来ない。

そう思うのに、涙がこぼれた。
 止めようと思っても、あとからあとから込み上げて来て止まらない。



 『もう無理だ、別れよう。』



 何の予感もなかった。 
 祐司に会いたいと言われた時は、いつもと同じ、ただのデートだと思ってた。
このところ仕事が忙しくてなかなか会えなかった。 
 電話やLINEさえわずらわしくて、ちゃんと返事をしていなかった。 
 何ヵ月か会えなかったその間に、祐司の気持ちがこんなにも離れていたなんて…そんなこと、考えもしなかった。 



 私は祐司に懇願した。 
 考え直してくれって。 



 祐司は私に訊ねた。 



 『仕事と俺、どっちを取るんだ?』って。 



その時、改めて、私は自分の気持ちを知った。 



 私は『祐司』とは言えなかった。 
 口に出して、仕事だとは言えなかったけど、心の中では仕事だとわかってた。



 祐司はそのことを悟った。 



 『さようなら、有紀…今までありがとうな。』



 私は祐司の背中を追うことが出来なかった。 
 追いかけたいけど、自分に嘘は吐けない。 
 身動きも出来ず、その場に座ったままだった。 



 仕事なんて、生活をするためだけのものだったはずなのに、いつの間にか、とても楽しくて遣り甲斐を感じるものに変わってた。
 私は、疲れも忘れ、毎日遅くまで働いた。
 休日に出勤することも珍しくはなかった。 
 働けば働くほど、手応えが感じられ、私はますます仕事にのめり込んで行った。 



 自業自得… 
すべて私が悪いんだ。 
なのに、なぜ、こんなにも悲しいんだろう… 



薄暗くなりかけた日差しの中…私は泣き続けた。 



 ***



どのくらい、そうやっていただろう。あたりはすでに闇に包まれ、街灯に灯りが灯った。



そろそろ帰らなきゃ… 



ハンカチで涙を拭う。
コンパクトで顔を見たら、泣きはらした目はまるでうさぎのように真っ赤だ。 



 酷い顔を行き交う人達に見られないように、俯いて家路に着いた。 
だけど、さんざん泣いたせいか、踏ん切りはついていた。



 私はうさぎみたいに繊細じゃない。 
どんなに寂しくたって、私は死にはしない。 



 ( 祐司…今まで本当にありがとう。 )

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