1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)

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アダムの求婚

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「ぎゃーーーーーっっ!」

 「紗枝さん、ぼ、ぼ、僕と結婚してください!」

 僕は、紗枝さんの前に指輪を差し出した。
 僕の有り金全部をはたいて買ったオパールの指輪だ。



 「あ、淳史さん…な、なぜそんな恰好なんですか?」

 「実は、銭湯で服を盗まれまして…
ちょうど、近くの畑に無花果が植えられてたので、そのはっぱをいただいて来ました。
まるで、アダムとイブみたいでしょ?」

 僕には笑うしかなかった。
このところ、お金がなくてお風呂にもなかなか入れなかったから、せめてプロポーズする時くらい清潔にしたいと思ったんだ。
それが、間違いだった。
 小銭をかき集めて行った銭湯で、まさか衣類全部を盗まれるなんて…
でも、銭湯のすぐそばに無花果畑があって本当に良かった。
それがなかったら、僕は完全な変態だ。
おまわりさんにみつからなくて良かった…



「あ、あの…紗枝さん…良かったら中に入れてもらえませんか?」

 「あ、す、すみません。」

 紗枝さんは僕を家の中に入れてくれた。
そして、紗枝さんのジャージを貸してくれた。



 「本当にすみません。
こんな状態でプロポーズなんて、非常識だとは思ったんですが…」

 「わかってます。約束を果たして下さったんですよね。」

 「覚えててくれたんですか?」

 「……もちろんです。」



そう、あれは中学三年生の時の体育の時間のことだった。
マイムマイムの曲を踊った時…僕は君に言ったんだ。
 「27歳の君の誕生日にプロポーズする。」って。
 付き合い始めて、まだ一か月も経つか経たないかの頃だったね。



それから、大学時代まで付き合って…
だけど、もうすぐ卒業って頃、君はおばあさんのところに行ってしまった。
 詳しいことは話してくれなかったけど、きっとおばあさんの体調が悪かったんじゃないかって思ってた。
それからは、メールだけの付き合いになって…そのメールも日を追うごとに少なくなって…
もしかしたら、おばあさんのところに行くっていうのは嘘で、実は、僕は嫌われたんじゃないかって考えたりもした。



でも、君はまた戻って来た。
そして、その連絡もくれた。
 僕たちはこれからまた恋愛の続きを再開するはずだった。
そんな矢先…僕はこんなことになってしまった。
 僕だって悩んだんだ。
こんな状態でプロポーズなんてしていいのかって…
でも、約束は破れない。
やるだけのことをやって、そして君に断ってもらえば良い。
そう思ってやってきた。



 「遠藤さんがあなたのことを心配してましたよ。」

 「えっ!?遠藤が?」

 紗枝さんは頷いた。



 「それと…事情もすべて聞きました。
お子さんの手術代…どうにか集まったそうです。」

 「そ、そうですか!良かった…」

 僕が無一文になったのは遠藤の子供の手術代のためだった。
しがないサラリーマンの僕には貯金さえなく…だから、家財を売ってアパートも引き払い、それで得たお金のほとんどを遠藤に渡した。
 遠藤は子供の頃からの友人だ。
その友人の子供が生きるか死ぬかの瀬戸際なんだ。
 僕に出来ることならなんだってする覚悟だった。



 「淳史さん、プロポーズをお受けします。
 今日からここで一緒に暮らしましょう。」

 「ほ、本当ですか!?」

 夢のようだった。



 「淳史さん、オパールの宝石言葉は希望っていうんですよ。
きっと大丈夫です。
 二人で頑張りましょう!」

 「紗枝さん、ありがとう!」

 僕は、紗枝さんの両手を固く握り締めた。
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