1ページ劇場④

ルカ(聖夜月ルカ)

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水に浮かべて…

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「美織、早く来いよ。」

「ちょっと待ってよ。」

美織は、少し不服そうな顔をして、俺の後をついてくる。



その日、俺たちは、学校の裏の山の中を歩いていた。
今日は暑いから、涼しい山の中で遊ぼうって、俺が美織を誘ったんだ。
だけど、それは真実とはちょっと違う。



「ねぇ、亮太、一体どこに行くつもりなの?」

「あとちょっとだよ。」

遠くに聞こえる蝉時雨…
暑苦しいその声を、涼やかなせせらぎの音が中和する。
俺たちは川沿いを歩いて行った。
ついつい、歩みが速くなるのは、今日の計画のせいだ。



俺たちはようやく今日の目的地…森の中の泉にたどり着いた。
俺は澄み切ったその水を、ごくごくと喉を鳴らして飲んだ。



これからすることを考えたら、すごく喉が渇く。



そう、俺は今から美織に告白するんだ。
中学になったら、他所の小学校の生徒も来るし、美織を誰にも取られたくないから。
今から付き合い始めて、ラブラブな状態で中学に入学したいんだ。



「あぁ、冷たくて美味しい!」

いつの間にか美織がすぐ傍にいて、俺と同じように水を飲んでいた。



「美織、占い好きだろ?」

「え?」

「おまえの恋人のこと、占ってやるよ。」

「こ、恋人?」

美織はすごく驚いたような顔をしたけど、その顔はすぐに笑顔に変わった。



「うん。美織の運命の人が誰なのかを占うんだ。
さ、この中から、一枚選ぶんだ。」

俺は五枚の紙を差し出した。



「え…う、うん。
じゃあ……これ!」

美織はその中から、一枚の紙を選んだ。



「じゃあ、その紙を水の上に浮かべるんだ。」

「水に?どうして?」

「いいからいいから。」

不思議そうな顔をしながらも、美織は紙を水の上に浮かべた。



「あ!」

紙が濡れると、そこに文字が浮かび上がった。



「おさ、な、なじみ。
えっ!?幼馴染が私の恋人ってこと?」

「どうやらそうみたいだな。」

「幼馴染っていったら…」

美織が俺をみつめ、その顔が少し赤らんだ。
俺も顔が熱いから、赤くなってるのかもしれない。
でも、照れてる場合じゃない。



水占いのおかげで、俺は告白して美織と付き合うことになった。
実は、五枚全部に『幼馴染』と書いてあったってことは、もちろん秘密だ。
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