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憧れの人
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(全然変わってないな…)
5年ぶりの帰省。
このところは、彼氏との時間を優先して、実家には帰らなかった。
彼氏と別れたから帰省するなんて、私もずいぶんと身勝手だ。
「あれ?もしかして、おけい?」
「え?」
最近では呼ばれることのなかった昔のニックネームで呼ばれて、私は思わず声をあげた。
「あ!やっぱりおけいだ!」
そう言って微笑むのは、祐介先輩だ。
同じ高校で、私の憧れだった人。
当時より大人っぽくなって、すごく素敵だ。
「祐介先輩!お久しぶりです!」
「だよな。もう十年以上になるかな?」
いや、高校を卒業してからも、偶然、一度会ってる。
確か大学4年の頃…初詣で会ったんだよ。
祐介先輩が忘れてたのはちょっとショックだったけど、仕方がない。
先輩は昔から友達も多いし、モテる人だから。
「……そうですね。」
わざわざ言うのもなんだから、言わずにおいた。
「しかし、おけい…綺麗になったな。」
「えっ!や、やだ。からかわないで下さいよ。」
「からかってなんかないよ。
おけい、モテるだろ?」
「ぜ、全然です。彼氏さえいません。」
「まさか!」
先輩との話はけっこう盛り上がり、明日の花火大会に誘われた。
思いがけない誘いに、私は俄に浮かれた。
彼氏と別れたのは、こんな新たな恋が始まるからなのか?なんてことを考えては、顔を綻ばせた。
*
当日は、気合いを入れて、浴衣を着て出掛けた。
「わぁ、おけい。今日は飛び切り色っぽいな。」
「また、そんなことを。
たまには着ないともったいないから着てみただけですよ。」
「いや、マジで色っぽいって。
俺、くらくらしてるよ。」
本当に口がうまいんだから。
そうは思いつつも嫌な気はしなかった。
「あっちでみよう。」
そう言いながら、ごく自然に握られた手に私はまるで中学生に戻ったかのようにドキドキした。
花火を見てる間も、その手は離されることがなく…
私は先輩の気もちがわからず、ただ戸惑うばかりだった。
「おけい、今日はありがとうな。楽しかったよ。」
「こちらこそ、どうもありがとうございました。」
そう言った瞬間、抱き寄せられ、先輩の唇が私の唇に重なった。
(え?)
驚きながらも、私はその甘美な温もりに酔いしれた。
「おけい、良かったら今から…」
「あ、おけい!!」
その声に反応するかのように、先輩が私の体を離した。
「あ!淳美!」
それは高校時代の友達の淳美だった。
「やっぱり、おけいだ、それに先輩も…久しぶり~!」
「あ、あぁ、そうだね。久しぶり!」
「おけい、ちょっと用を思い出した。またな!」
先輩はそそくさとその場を離れて行った。
私は、淳美の出現を多少疎ましく感じながらも、離れられないでいた。
「……危ないところだったね。」
「え?何が?」
「先輩のことだよ。あんた、今、言い寄られてたんでしょ?」
「えっ!?」
聞いてみれば、先輩は数年前に結婚していて、先輩のお母さんと奥さんの仲が悪いから、お盆には一人で帰ってくるらしいんだけど…
その度に、先輩は浮気をしていると言う。
「お盆は、先輩にとっては浮気祭りなんだよ。
毎年みたいにやってるんだから。」
「ま、まさか…」
衝撃的な話に私は浮かれた気持ちが一瞬で吹き飛んだ。
5年ぶりの帰省。
このところは、彼氏との時間を優先して、実家には帰らなかった。
彼氏と別れたから帰省するなんて、私もずいぶんと身勝手だ。
「あれ?もしかして、おけい?」
「え?」
最近では呼ばれることのなかった昔のニックネームで呼ばれて、私は思わず声をあげた。
「あ!やっぱりおけいだ!」
そう言って微笑むのは、祐介先輩だ。
同じ高校で、私の憧れだった人。
当時より大人っぽくなって、すごく素敵だ。
「祐介先輩!お久しぶりです!」
「だよな。もう十年以上になるかな?」
いや、高校を卒業してからも、偶然、一度会ってる。
確か大学4年の頃…初詣で会ったんだよ。
祐介先輩が忘れてたのはちょっとショックだったけど、仕方がない。
先輩は昔から友達も多いし、モテる人だから。
「……そうですね。」
わざわざ言うのもなんだから、言わずにおいた。
「しかし、おけい…綺麗になったな。」
「えっ!や、やだ。からかわないで下さいよ。」
「からかってなんかないよ。
おけい、モテるだろ?」
「ぜ、全然です。彼氏さえいません。」
「まさか!」
先輩との話はけっこう盛り上がり、明日の花火大会に誘われた。
思いがけない誘いに、私は俄に浮かれた。
彼氏と別れたのは、こんな新たな恋が始まるからなのか?なんてことを考えては、顔を綻ばせた。
*
当日は、気合いを入れて、浴衣を着て出掛けた。
「わぁ、おけい。今日は飛び切り色っぽいな。」
「また、そんなことを。
たまには着ないともったいないから着てみただけですよ。」
「いや、マジで色っぽいって。
俺、くらくらしてるよ。」
本当に口がうまいんだから。
そうは思いつつも嫌な気はしなかった。
「あっちでみよう。」
そう言いながら、ごく自然に握られた手に私はまるで中学生に戻ったかのようにドキドキした。
花火を見てる間も、その手は離されることがなく…
私は先輩の気もちがわからず、ただ戸惑うばかりだった。
「おけい、今日はありがとうな。楽しかったよ。」
「こちらこそ、どうもありがとうございました。」
そう言った瞬間、抱き寄せられ、先輩の唇が私の唇に重なった。
(え?)
驚きながらも、私はその甘美な温もりに酔いしれた。
「おけい、良かったら今から…」
「あ、おけい!!」
その声に反応するかのように、先輩が私の体を離した。
「あ!淳美!」
それは高校時代の友達の淳美だった。
「やっぱり、おけいだ、それに先輩も…久しぶり~!」
「あ、あぁ、そうだね。久しぶり!」
「おけい、ちょっと用を思い出した。またな!」
先輩はそそくさとその場を離れて行った。
私は、淳美の出現を多少疎ましく感じながらも、離れられないでいた。
「……危ないところだったね。」
「え?何が?」
「先輩のことだよ。あんた、今、言い寄られてたんでしょ?」
「えっ!?」
聞いてみれば、先輩は数年前に結婚していて、先輩のお母さんと奥さんの仲が悪いから、お盆には一人で帰ってくるらしいんだけど…
その度に、先輩は浮気をしていると言う。
「お盆は、先輩にとっては浮気祭りなんだよ。
毎年みたいにやってるんだから。」
「ま、まさか…」
衝撃的な話に私は浮かれた気持ちが一瞬で吹き飛んだ。
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