1ページ劇場④

ルカ(聖夜月ルカ)

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かき氷の効能

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「ねぇ、パパ、何かないの?
もうすぐ新学期だよ。」

「おいおい、何言ってるんだ。
これは、翔の宿題なんだから、翔が頑張るしかないだろ。」

「だって、全然思いつかないんだもん。」

「思いつくまで頑張らなきゃな。
あ、そうだ、ちょっと待ってろよ。」

俺は、台所に行き、俺と翔の分のかき氷を作った。



「翔、メロンといちご、どっちが良い?」

「僕、メロン!」

翔は、嬉しそうな顔でメロンのかき氷を受け取った。



「冷たいもの食べたら、きっと頭も冴えて良いアイディアが浮かぶぞ。」

「そうだね!」

この数日間、翔が苦労してるのは、夏休みの課題のひとつで、自作の怖い話を考えるというものだ。
翔は怖がりということもあってか、なかなか思いつかないようだ。



「翔、どうだ?何か思い浮かんだか?」

「う~ん…」

口を緑色に染めた翔は、残りのかき氷をじっとみつめながら何かを考えていた。
やはり、思いつかないか…
仕方がない。
一緒に考えてやるか…
そう思った時だった。



「あ!思いついた!」

翔が大きな声を上げた。



「どんなの思いついたんだ?」

「えっとね…妖怪カマキリ女っていうんだ。」

なんとも小学生らしい思い付きだ。



「妖怪カマキリ女か…なんだか怖そうだな。
どんな話なんだ?」

俺は、話を広げる。



「あのね…
カマキリ女は、顔が緑色で、逆三角形で目が吊り上がってるんだ。
そして、手が鎌になってて、それを振り上げて追いかけて来るんだ!」

「へぇ…それは怖いな。
カマキリ女はどうやったら追いかけて来るんだ?」

「え?あ、そうか。
えっとね……あ、カマキリ女はかき氷のメロン味が大好きなんだ。
だから、メロンのかき氷を食べてる人を見つけたら、追いかけて来るんだ。」

「へぇ、メロンのかき氷か…あ!カマキリ女だ!」

「えっ!?」

顔をひきつらせた翔が、素早い動作で後ろを振り向いた。



「もうっ!パパの意地悪!」

騙されたと気付いて、翔が頬を膨らませる。



「良かったじゃないか、翔。
怖い話が出来て。」

「う、うん、そうだね。」

まさか本当にかき氷のおかげでアイディアが浮かぶとは思わなかった。
でも、おかげで宿題も解決したし、俺の体も涼しくなった。
かき氷って、なかなかたいしたやつだな、なんて、ふと思った。
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