1ページ劇場④

ルカ(聖夜月ルカ)

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豆ご飯

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「おまちどおさま。」



にこにこしながら、彼女が持って来たのは、豆ご飯だった。



「あれ?今日は、特別なものを食べさせてくれるんじゃ…」

「そうよ。だからこれなの。
特別な豆ご飯。」

彼女の真意がよくわからない。
でも、ストレートにそう言ったら、彼女が怒りそうだから、僕は何も言わずに豆ご飯を食べた。



「……どう?」

「うん、美味しいよ。」



その言葉に嘘はない。
実際に豆ご飯は美味しかった。
でも、言ってみれば、ただの美味しい豆ご飯だ。
特別なものとは、やっぱり違うと思う。



「見て。このエンドウ豆、さやが紫色なんだよ。」

彼女はポケットからエンドウ豆の鞘を取り出して、テーブルの上に置いた。



「へぇ、変わってるね。」

それも嘘ではない。
豆は緑だけど、鞘は濃い紫色だ。
でも、だからといって特別だとは言えない。



「実は、これ…私が育てたエンドウ豆なんだよ。」

「そうなんだ。」

彼女が特別と言った意味がようやくわかったような気がした。
自分で育てた豆だからこそ、特別なんだな。



「しかも……ジャジャーン!」

彼女はポケットから紙を出した。
そこには、有名な黄金のマスクの画像と共に『ツタンカーメンのエンドウ豆』と書いてあった。



「……え?」

「これはね、ツタンカーメンの墓からみつかった、約3000年前のエンドウ豆なんだよ~」

そんなこと、信じられる筈もなかったけど、彼女はとても嬉しそうだったから、僕は何も言えなかった。



そうだ、きっと、悪いのは僕だ。
彼女が負けず嫌いだってわかっていながら、僕はこの間、富士山にTシャツだけで登った話をした。
みんなは分厚いニットを着てるのに、僕はTシャツ一枚だったから、みんなにすごく驚かれたって話をしたのが悪かったんだ。
だから、彼女はそれよりもすごい何かをしたくなったんだ。



「ね?すごいでしょ。ツタンカーメンのエンドウ豆だよ。」

「……うん、すごいね。
びっくりだよ。」

「だよね、だよね~」

彼女は上機嫌だ。



うん、それで良い。
ツタンカーメンが関係しようとしなかろうと、確かに、この豆ご飯は美味しいし、鞘は紫だし、彼女が育てたものだし。



そう、これは正真正銘『特別』だ。
僕は、豆ご飯を口いっぱいに頬張った。
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