306 / 364
豆ご飯
1
しおりを挟む
「おまちどおさま。」
にこにこしながら、彼女が持って来たのは、豆ご飯だった。
「あれ?今日は、特別なものを食べさせてくれるんじゃ…」
「そうよ。だからこれなの。
特別な豆ご飯。」
彼女の真意がよくわからない。
でも、ストレートにそう言ったら、彼女が怒りそうだから、僕は何も言わずに豆ご飯を食べた。
「……どう?」
「うん、美味しいよ。」
その言葉に嘘はない。
実際に豆ご飯は美味しかった。
でも、言ってみれば、ただの美味しい豆ご飯だ。
特別なものとは、やっぱり違うと思う。
「見て。このエンドウ豆、さやが紫色なんだよ。」
彼女はポケットからエンドウ豆の鞘を取り出して、テーブルの上に置いた。
「へぇ、変わってるね。」
それも嘘ではない。
豆は緑だけど、鞘は濃い紫色だ。
でも、だからといって特別だとは言えない。
「実は、これ…私が育てたエンドウ豆なんだよ。」
「そうなんだ。」
彼女が特別と言った意味がようやくわかったような気がした。
自分で育てた豆だからこそ、特別なんだな。
「しかも……ジャジャーン!」
彼女はポケットから紙を出した。
そこには、有名な黄金のマスクの画像と共に『ツタンカーメンのエンドウ豆』と書いてあった。
「……え?」
「これはね、ツタンカーメンの墓からみつかった、約3000年前のエンドウ豆なんだよ~」
そんなこと、信じられる筈もなかったけど、彼女はとても嬉しそうだったから、僕は何も言えなかった。
そうだ、きっと、悪いのは僕だ。
彼女が負けず嫌いだってわかっていながら、僕はこの間、富士山にTシャツだけで登った話をした。
みんなは分厚いニットを着てるのに、僕はTシャツ一枚だったから、みんなにすごく驚かれたって話をしたのが悪かったんだ。
だから、彼女はそれよりもすごい何かをしたくなったんだ。
「ね?すごいでしょ。ツタンカーメンのエンドウ豆だよ。」
「……うん、すごいね。
びっくりだよ。」
「だよね、だよね~」
彼女は上機嫌だ。
うん、それで良い。
ツタンカーメンが関係しようとしなかろうと、確かに、この豆ご飯は美味しいし、鞘は紫だし、彼女が育てたものだし。
そう、これは正真正銘『特別』だ。
僕は、豆ご飯を口いっぱいに頬張った。
にこにこしながら、彼女が持って来たのは、豆ご飯だった。
「あれ?今日は、特別なものを食べさせてくれるんじゃ…」
「そうよ。だからこれなの。
特別な豆ご飯。」
彼女の真意がよくわからない。
でも、ストレートにそう言ったら、彼女が怒りそうだから、僕は何も言わずに豆ご飯を食べた。
「……どう?」
「うん、美味しいよ。」
その言葉に嘘はない。
実際に豆ご飯は美味しかった。
でも、言ってみれば、ただの美味しい豆ご飯だ。
特別なものとは、やっぱり違うと思う。
「見て。このエンドウ豆、さやが紫色なんだよ。」
彼女はポケットからエンドウ豆の鞘を取り出して、テーブルの上に置いた。
「へぇ、変わってるね。」
それも嘘ではない。
豆は緑だけど、鞘は濃い紫色だ。
でも、だからといって特別だとは言えない。
「実は、これ…私が育てたエンドウ豆なんだよ。」
「そうなんだ。」
彼女が特別と言った意味がようやくわかったような気がした。
自分で育てた豆だからこそ、特別なんだな。
「しかも……ジャジャーン!」
彼女はポケットから紙を出した。
そこには、有名な黄金のマスクの画像と共に『ツタンカーメンのエンドウ豆』と書いてあった。
「……え?」
「これはね、ツタンカーメンの墓からみつかった、約3000年前のエンドウ豆なんだよ~」
そんなこと、信じられる筈もなかったけど、彼女はとても嬉しそうだったから、僕は何も言えなかった。
そうだ、きっと、悪いのは僕だ。
彼女が負けず嫌いだってわかっていながら、僕はこの間、富士山にTシャツだけで登った話をした。
みんなは分厚いニットを着てるのに、僕はTシャツ一枚だったから、みんなにすごく驚かれたって話をしたのが悪かったんだ。
だから、彼女はそれよりもすごい何かをしたくなったんだ。
「ね?すごいでしょ。ツタンカーメンのエンドウ豆だよ。」
「……うん、すごいね。
びっくりだよ。」
「だよね、だよね~」
彼女は上機嫌だ。
うん、それで良い。
ツタンカーメンが関係しようとしなかろうと、確かに、この豆ご飯は美味しいし、鞘は紫だし、彼女が育てたものだし。
そう、これは正真正銘『特別』だ。
僕は、豆ご飯を口いっぱいに頬張った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる