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11、血玉石(救いの力)ブラッドストーン

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ジェムストーンの落胆は酷く大きなもので、肩を震わせ涙を流した。
 彼は、両親に楽をさせてやりたいという一心から石を堀り続けていたというのに、その父がもう亡くなっていたのだ。
 私には彼の深い悲しみが感じられ、かける言葉さえみつけられず、ただ、彼の涙が止まるのをじっと見守ることしか出来なかった。



 「すまなかったな……」



ジェムストーンはしばらくすると落ち着きを取り戻した。
 涙を拭い、そして、石の塊を見つめながら、彼はぽつりと呟いた。



 「やっと掘り出したのに、何の意味もなかった。
こいつには何か不思議な力を感じたんだがな……
実をいうと、これが俺の探し求めていた幸せの石じゃないか…?なんてことさえ考えていたんだが、まるで違ったようだな…」

 「……そうでしょうか?
 私には、その石が幸せの石ではないかと思えます。」

 「なんでだ?
 親父が死んじまった今、なんでこいつが幸せの石だというんだ?」

ジェムストーンは私の言葉に気分を害したようで、赤い目で私を睨み付けた。



 「奥様はあなたのことをとても心配されてました。
もし、あなたが家に戻り、宝石店を一緒にきりもりしていかれるようになったら…
あなたの母上はどんなに心強く、お喜びになられることでしょうか。
 大きな屋敷に住み、好きなように贅沢が出来ても、それが本当に幸せなことでしょうか。
そんなものよりも大切なものはたくさんあると思うのです。
あなたのお母上にとって、一番大切なもの……それはあなた以外の何者でもありません。
この石のおかげで私達は出会い、そしてアランさんの訃報をお報せすることになった…
それは残念ながら良い報せではありませんでしたが、そのことによりあなたが母上の元へ帰ることになれば、この石はあなた方親子にとっての幸せの石だと言えるのではないでしょうか。」

ジェムストーンは、私の長い話を黙って聞き、何かを考えるように黙って俯いた。

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