上 下
359 / 449
15、黒曜石(希望)オブシディアン

しおりを挟む
「指輪が…!!」

 「そう…あなたのあの指輪はあなたの元を離れました。
あの指輪は、もう、あなたにも、あなた以外の人にも危害を与えることはないわ…」

 「では、あなたがあの指輪を……」

 西の塔の魔女は悲しい目をして私をみつめ、ゆっくりと頭を振る。



 「では、誰が……?」

 「……サリーさんです。」

 「サリーが…?
なぜ、サリーが……」

サリーにはタロットで未来を見通す力はあるはずだが、私のあの指輪をどうにかする力等持っていたのだろうか?
 私にはわけがわからなかった。



 「その前に、あの石についてわかったことを少しお話しておきましょう…
あの石は遥か昔のある恋人達に端を発しています…
彼等はある残酷で悲しい出来事により結ばれることが出来なかった。
その深い悲しみと恨みが石に宿り、魔石となってしまったのです。
そして、次々と関わりのある人を不幸のどん底に突き落とし、時にはその人の命を奪いながら、過去から現在にいたるまで人から人へ渡ってきたのです。」 

 「私もその石に関わりがあるということですか?
 復讐されるようなことを犯していたと…」

 「いいえ、あなただけは違うのです。
あなたは、この悲しい復讐をやめさせるために選ばれた人……」

 西の搭の魔女は憐れみのこもった瞳で私をみつめる。



 「どういうことなのです?」

 「復讐を続けても、彼等に心の平穏は訪れなかった…
いえ、むしろ、そういうことを続けるうちに心はどんどんと寂しさと虚しさに覆いつくされていったのだと思います。
だけど、魔石は止まらない…
だから、魔石の暴走を止める人が必要だったのです。」

 「それが私だと……?」

 西の搭の魔女はゆっくりと頷いた。
 俄かには信じ難い話だが、今はそれを受け入れるしかない。 
しおりを挟む

処理中です...