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「……そうです…
でも、その石はあなた方に関わることはおそらくないでしょう…
ですから、心配はありません……
ヴェール……私が今から言うことをよく聞いて下さい……」

 「何ですか?」

 「ヴェール……あなたに会えて本当に幸せでした…
それに、記憶を取り戻すことが出来て、本当に良かった…
最後に少しでもあなたのために出来ることがあって、私は…とても幸せです……」

 「……ネリーさん、最後だなんて、一体、何をおっしゃっているのです!?
 石は納得したのでしょう?」

 「……石は……石は、私の命を最後にすることで納得してくれたのです……」

その言葉に、ヴェールは息を飲み、瞳が大きく見開かれた。



 「ネリーさん…ま、まさか、あなたは……!」

 「ヴェール……
レヴさんにはこのことを絶対に言わないと約束して下さい…
レヴさんはあなたが助け、私は急な病で亡くなったことにでもしておいてください。
……そして、どうか森の民を守っていって下さい…
お願いします…
 ……ヴェール…もう一度、顔をよく見せて……」

ネリーの手が、ヴェールの頬にゆっくりと近付いていく。



 「……ネリーさん……!」

ヴェールが掴んだネリーの指先は、氷のように冷たいものだった。



 「ヴェール…後のことを…どうか…どうか……よろ……し……」

 「……ネリーさん…!?
ネリーさん?
………ネリーさん!!」

ネリーの…手から力が抜け、それと同時に、美しき碧きアマゾナイトがかすかな音をたてて、砂のように粉々に砕け散った。 
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