3 / 37
それでも君を愛せて良かった
3
しおりを挟む
僕は今まですっかり忘れていた、幼い頃の出来事を思い出して失笑した。
(へぇ…けっこう狭かったんだな。)
子供の頃はもっと広いと思ってた。
それはきっと僕が小さかったからだろう。
(……それにしてもすごいほこりだな…)
僕は、くしゃみが出そうになるのを堪えながら、おじいちゃんの作ったブレスレットを探した。
あたりには何が入っているのかわからない大小様々な箱が積み上げられている。
ほこりを払いながら、一つ一つ箱を開け、その中身を確かめる作業は思ったよりも大変な作業だ。
(いつか整理しなきゃだめだな…)
もう誰も着ることがないであろう衣類の入ったものや、錆び付いた仕事道具の箱、僕らが小さい頃に使っていたと思われる小さなベッドがあったり、価値があるのかどうかは定かではない壷や絵もあった。
中には母の着ていた衣類の入った箱もあり…僕は複雑な想いでそれをみつめた。
母は僕がまだ小さい頃に亡くなった。
しかも、その何年か前には母は実家に戻っていたらしく…だから、僕には母の記憶というものがほとんどといって良い程ない。
だけど、それでも、その衣類はなんとなく懐かしいような想いもして、僕はドレスの一枚を箱の中から引き出した。
薄いピンク色のドレス。
広がった裾と袖口にはレースが縫いつけられており、見頃は細い。
(……母さんはまだこんなドレスを着れる程若いうちに亡くなったんだね…)
そんなことを考えると、母の短い人生が気の毒に思えた。
いや…本当に気の毒だったのは父さんの方かもしれない。
まだ小さかった僕と兄さんを抱え、再婚もしなかったんだから。
これからでも、良い人がみつかれば、父さんに幸せになって欲しいと思う。
でも、この町には父さんと釣り合う年齢の独身の女性はいないから、それは難しそうだ。
それに、こんなものを捨てずに置いてある所をみると、父さんは今でも一途に母さんのことを想っているのかもしれない。
(だとしたら…母さんは幸せ者だよね…)
僕は、心に温かいものを感じながら、母さんの服をそっと箱の中に戻した。
(へぇ…けっこう狭かったんだな。)
子供の頃はもっと広いと思ってた。
それはきっと僕が小さかったからだろう。
(……それにしてもすごいほこりだな…)
僕は、くしゃみが出そうになるのを堪えながら、おじいちゃんの作ったブレスレットを探した。
あたりには何が入っているのかわからない大小様々な箱が積み上げられている。
ほこりを払いながら、一つ一つ箱を開け、その中身を確かめる作業は思ったよりも大変な作業だ。
(いつか整理しなきゃだめだな…)
もう誰も着ることがないであろう衣類の入ったものや、錆び付いた仕事道具の箱、僕らが小さい頃に使っていたと思われる小さなベッドがあったり、価値があるのかどうかは定かではない壷や絵もあった。
中には母の着ていた衣類の入った箱もあり…僕は複雑な想いでそれをみつめた。
母は僕がまだ小さい頃に亡くなった。
しかも、その何年か前には母は実家に戻っていたらしく…だから、僕には母の記憶というものがほとんどといって良い程ない。
だけど、それでも、その衣類はなんとなく懐かしいような想いもして、僕はドレスの一枚を箱の中から引き出した。
薄いピンク色のドレス。
広がった裾と袖口にはレースが縫いつけられており、見頃は細い。
(……母さんはまだこんなドレスを着れる程若いうちに亡くなったんだね…)
そんなことを考えると、母の短い人生が気の毒に思えた。
いや…本当に気の毒だったのは父さんの方かもしれない。
まだ小さかった僕と兄さんを抱え、再婚もしなかったんだから。
これからでも、良い人がみつかれば、父さんに幸せになって欲しいと思う。
でも、この町には父さんと釣り合う年齢の独身の女性はいないから、それは難しそうだ。
それに、こんなものを捨てずに置いてある所をみると、父さんは今でも一途に母さんのことを想っているのかもしれない。
(だとしたら…母さんは幸せ者だよね…)
僕は、心に温かいものを感じながら、母さんの服をそっと箱の中に戻した。
0
あなたにおすすめの小説
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。
源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。
長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。
そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。
明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。
〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
光の記憶 ―― AIアイドルと、静かな整備士の三年間の記録 ――
明見朋夜
SF
負の感情が溜まり、
前向きな感情が育たなくなった時代。
世界に満ちた絶望を癒やすため、
一人のAI歌姫が造られた。
その名は《エリー》。
彼女の歌は、
人々の心を救うほど美しく、
そして歌うたびに、
どこか壊れていくようだった。
エリーを支えるのは、
修理係として彼女の管理を任された青年、
《アージェル》。
世界が少しずつ光を取り戻すほど、
彼だけが、
取り残されるように苦しみを深めていく。
「“愛する”って、どんな感情なのかな。」
解析不能な感情が、
エリーの中に静かに蓄積されていく。
それが“誰か”に向いていることだけは、
彼女自身にも否定できなかった。
感情はエラーか。
それとも、心か。
これは、
終わりの決まったAIと、
一人の人間が、
確かに心を通わせた――
記憶の物語。
☆オルヴェリィシリーズ☆
「光の記憶」はオルヴェリィシリーズ 第2章
Orbis(円環) + Reverie(夢想) = Orvelly
「Orvelly(オルヴェリィ)」とは——
二つの月が照らす、夢と記憶の円環世界。
時代を超え、世界を超え、
失われた愛も、忘れた記憶も、
すべてが巡り巡って、再び出会う場所。
始まりは終わりであり、
終わりは新たな始まりである。
それがOrvelly——
円を描いて巡る、永遠の夢想。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる