1ページ劇場⑤

ルカ(聖夜月ルカ)

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シルバーウィークから始まった

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(さてと。あとひと踏ん張り!)

シルバーウィークの前日、仕事の帰りに、映子はスーパーに向かって歩いていた。
映子には、この連休、出かける予定はなかった。
だから、引きこもってぐーたら過ごすため、食料を買いに行ったのだ。



(……ん?)



映子の前を歩く者がいた。
服装や体格からして、まだ若そうな男性だ。
だが、歩き方がどうもおかしい。
ゆっくりと…左右に揺れながら歩いている。



(えっ!?もしかして、ヤバい人?)



その男が唐突に倒れた。



「だ、大丈夫ですか!?」

映子は反射的に駆け出した。



(わ、わぉ!)



倒れた男性はたいそうイケメンだった。



「す、すみません。ちょっと熱があって…」

男は家に何も無いから、必要なものを買いにスーパーに行く途中だと言った。



「そんな体で無理ですってば。
必要なものは私が買ってきますから、まずは家に戻りましょう。」

映子は、男に肩を貸し、家まで送り届けた。



「じゃあ、買い物行ってきます。」

「すみません。あ、これを。」

男は、鋲のたくさん付いた財布を差し出し、隆史という名を告げた。







「何から何まで、申し訳ありません。」

「いえ、そんなこと、お気になさらずに。
さ、休んで下さい。」

映子は買い物をし、隆史にお粥を作って食べさせ、解熱剤を飲ませた。



「じゃあ、また明日も来ますからね。」



映子の連休は、ひきこもりではなく、隆史の看病となった。
その甲斐あって、隆史は三日目にはすっかり元気を取り戻した。



「本当にお世話になりました。あなたのおかげで助かりました。
お礼…という程のことではありませんが、良かったら、シルバーウィーク後半、どこかに出かけませんか?」

「はい、喜んで!」

木曜に駅で待ち合わせることになった。
思いがけない展開に、映子は浮かれていた。
ところが、水曜日の夜から映子は急に発熱し、体調は最悪。
どうやら隆史の風邪が移ったらしい。
とても駅までは行けなかった。
映子は、隆史の家と名前しか知らなかったので、連絡も出来ないまま、金曜が過ぎ、そして土曜日にようやく熱が下がった。



(あぁ、最悪…)



連絡しなかったことで、隆史は約束をすっぽかされたと思い、怒ってるはず。
そう思うと、映子は隆史の家を訪ねることが出来なかった。



食べるものが底をついたからスーパーに行こうと思いながら、映子は、ふと、駅の方に歩いていた。
待ち合わせの時はとうに過ぎてるから、隆史がいるはずはない。



(え…!?)



「ここだよ~!」

隆史は映子をみつけ、大きく手を振る。



「ど、どうして?」

駆けてきた隆史が微笑む。

「僕は気が長いんだ。」



残り少ないシルバーウィークだったが、二人にとっては、とても楽しいものとなった。


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