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シルバーウィークから始まった
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(さてと。あとひと踏ん張り!)
シルバーウィークの前日、仕事の帰りに、映子はスーパーに向かって歩いていた。
映子には、この連休、出かける予定はなかった。
だから、引きこもってぐーたら過ごすため、食料を買いに行ったのだ。
(……ん?)
映子の前を歩く者がいた。
服装や体格からして、まだ若そうな男性だ。
だが、歩き方がどうもおかしい。
ゆっくりと…左右に揺れながら歩いている。
(えっ!?もしかして、ヤバい人?)
その男が唐突に倒れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
映子は反射的に駆け出した。
(わ、わぉ!)
倒れた男性はたいそうイケメンだった。
「す、すみません。ちょっと熱があって…」
男は家に何も無いから、必要なものを買いにスーパーに行く途中だと言った。
「そんな体で無理ですってば。
必要なものは私が買ってきますから、まずは家に戻りましょう。」
映子は、男に肩を貸し、家まで送り届けた。
「じゃあ、買い物行ってきます。」
「すみません。あ、これを。」
男は、鋲のたくさん付いた財布を差し出し、隆史という名を告げた。
*
「何から何まで、申し訳ありません。」
「いえ、そんなこと、お気になさらずに。
さ、休んで下さい。」
映子は買い物をし、隆史にお粥を作って食べさせ、解熱剤を飲ませた。
「じゃあ、また明日も来ますからね。」
映子の連休は、ひきこもりではなく、隆史の看病となった。
その甲斐あって、隆史は三日目にはすっかり元気を取り戻した。
「本当にお世話になりました。あなたのおかげで助かりました。
お礼…という程のことではありませんが、良かったら、シルバーウィーク後半、どこかに出かけませんか?」
「はい、喜んで!」
木曜に駅で待ち合わせることになった。
思いがけない展開に、映子は浮かれていた。
ところが、水曜日の夜から映子は急に発熱し、体調は最悪。
どうやら隆史の風邪が移ったらしい。
とても駅までは行けなかった。
映子は、隆史の家と名前しか知らなかったので、連絡も出来ないまま、金曜が過ぎ、そして土曜日にようやく熱が下がった。
(あぁ、最悪…)
連絡しなかったことで、隆史は約束をすっぽかされたと思い、怒ってるはず。
そう思うと、映子は隆史の家を訪ねることが出来なかった。
食べるものが底をついたからスーパーに行こうと思いながら、映子は、ふと、駅の方に歩いていた。
待ち合わせの時はとうに過ぎてるから、隆史がいるはずはない。
(え…!?)
「ここだよ~!」
隆史は映子をみつけ、大きく手を振る。
「ど、どうして?」
駆けてきた隆史が微笑む。
「僕は気が長いんだ。」
残り少ないシルバーウィークだったが、二人にとっては、とても楽しいものとなった。
シルバーウィークの前日、仕事の帰りに、映子はスーパーに向かって歩いていた。
映子には、この連休、出かける予定はなかった。
だから、引きこもってぐーたら過ごすため、食料を買いに行ったのだ。
(……ん?)
映子の前を歩く者がいた。
服装や体格からして、まだ若そうな男性だ。
だが、歩き方がどうもおかしい。
ゆっくりと…左右に揺れながら歩いている。
(えっ!?もしかして、ヤバい人?)
その男が唐突に倒れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
映子は反射的に駆け出した。
(わ、わぉ!)
倒れた男性はたいそうイケメンだった。
「す、すみません。ちょっと熱があって…」
男は家に何も無いから、必要なものを買いにスーパーに行く途中だと言った。
「そんな体で無理ですってば。
必要なものは私が買ってきますから、まずは家に戻りましょう。」
映子は、男に肩を貸し、家まで送り届けた。
「じゃあ、買い物行ってきます。」
「すみません。あ、これを。」
男は、鋲のたくさん付いた財布を差し出し、隆史という名を告げた。
*
「何から何まで、申し訳ありません。」
「いえ、そんなこと、お気になさらずに。
さ、休んで下さい。」
映子は買い物をし、隆史にお粥を作って食べさせ、解熱剤を飲ませた。
「じゃあ、また明日も来ますからね。」
映子の連休は、ひきこもりではなく、隆史の看病となった。
その甲斐あって、隆史は三日目にはすっかり元気を取り戻した。
「本当にお世話になりました。あなたのおかげで助かりました。
お礼…という程のことではありませんが、良かったら、シルバーウィーク後半、どこかに出かけませんか?」
「はい、喜んで!」
木曜に駅で待ち合わせることになった。
思いがけない展開に、映子は浮かれていた。
ところが、水曜日の夜から映子は急に発熱し、体調は最悪。
どうやら隆史の風邪が移ったらしい。
とても駅までは行けなかった。
映子は、隆史の家と名前しか知らなかったので、連絡も出来ないまま、金曜が過ぎ、そして土曜日にようやく熱が下がった。
(あぁ、最悪…)
連絡しなかったことで、隆史は約束をすっぽかされたと思い、怒ってるはず。
そう思うと、映子は隆史の家を訪ねることが出来なかった。
食べるものが底をついたからスーパーに行こうと思いながら、映子は、ふと、駅の方に歩いていた。
待ち合わせの時はとうに過ぎてるから、隆史がいるはずはない。
(え…!?)
「ここだよ~!」
隆史は映子をみつけ、大きく手を振る。
「ど、どうして?」
駆けてきた隆史が微笑む。
「僕は気が長いんだ。」
残り少ないシルバーウィークだったが、二人にとっては、とても楽しいものとなった。
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