1ページ劇場⑤

ルカ(聖夜月ルカ)

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隔世遺伝

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「書けたぞ!」



思わず、声に出してしまった。
それ程までに、今回の出来栄えは良かったんだ。



『冬瓜』



この瓜の字が、けっこう難しい。
でも、上手く書けた。
まさに、自画自賛状態だ。



「ねぇ、秋の季語を書いてよ。」

母が唐突に、僕にそんな依頼をした。
僕は、子供の頃から書道を習っていて、字にはそれなりの自信がある。
それに、書くことはストレス発散にもなるから、その依頼を引き受けることにした。
母は最近、俳句にハマっている。
僕が半紙に書いた季語を、母は部屋に所狭しと貼りたくっている。



「こんなもんで良いだろ?」

「あと一枚!ほら、ここだけスペースが空いてるじゃない。
ここにも貼らなきゃおかしいじゃない。」

「じゃ、何か言ってよ。」

秋の季語は、僕がネットで検索した。
あまりにたくさんあったから、母親に使えそうなものを選ばせた。



「う~ん、何が良いかなあ?」

母は大袈裟に頭をひねる。



「ただいま~」

息子の大翔が帰って来た。
現在、小学4年生だ。



「あ~~っ!」

突然の母の叫び声に、僕も大翔もびっくりして固まった。



「母さん、何なんだよ。」

「これ、これ!」

母さんは、大翔の胸に付けられた赤い羽根を指さした。



「どういうこと?」

「だから、赤い羽根よ、赤い羽根!」

「赤い羽根も季語なのか?」

念の為、ネットで調べてみたら、確かに『赤い羽根』も、秋の季語だった。



「じゃあ、赤い羽根にしよう。」

「僕、習字の時間に赤い羽根、書いたよ。」

「そうなの?じゃあ、見せて。」

「うん、持って来るね。」

大樹は、自分の部屋から、赤い羽根と書かれた半紙を持って来た。
残念ながら、大翔に字の才能はなさそうだ。
亡くなった妻も、それほど字は下手ではなかったはずだが…



「大翔の字は、私似だね。」

苦い笑みを浮かべながら、母は、大翔の半紙を壁に貼り付けた。
大翔は、貼り付けてもらってなんだか嬉しそうだ。



「ねぇ、パパ!
赤い筆で花丸描いてよ。」

「もうちょっとうまくなったらな。」

「え~~…」

「書道の練習しようか?」

「やだよ。僕、遊びに行って来るから~!」

大翔はバタバタと駆け出して行った。



「あ、出来た!」

『赤い羽根
胸に駆け出す
孫の声』

短冊に書かれた文字は、確かに大翔と同じく下手だった。
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