1ページ劇場⑤

ルカ(聖夜月ルカ)

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線香花火

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「今年もとっても綺麗だね…」

川のほとりで、私は線香花火に火を付けた。
小さな火花が静かな音を立てながら花を咲かせる。
そして、最後には丸い玉になってぽとりと落ちる。
1分にも満たない儚い花火だ。



「遼君は下手だったよね。
玉になる前に終わってた。
静かに持っとかないからだよ。
線香花火はね。静かに持って、静かに見守らなきゃだめなんだよ。」



私はまた新しい線香花火に火を付けた。



「あのね…私、来年からはここに来られないと思う。
実はね、結婚するんだ。
ここからうんと離れたとこに行くんだよ。
だから、きっともう来られない。」



火花を散らした線香花火は、また丸い玉になった。



「寂しいかもしれないけど、ごめんね。
引越し先の近くに、もしもこんな川があったら、そこで花火をするかもしれない。
川があったら、だけどね。」



私はまた線香花火に火を付けた。
火花の向こうに、あの頃のことが思い出された。



家に帰りかけている遼君にばったり会って、私は声をかけた。



「ねぇ、花火やろうよ。」



遼君は頷き着いてきた。
ふたりで川辺に行き、私は線香花火を渡した。



「えーっ、花火って線香花火かよ。ショボ~!」



その時、私はすごく悲しくなった。
私は線香花火が大好きなのに。
そして、なんだか無性に腹が立った。
線香花火のことをショボいだなんて…



そんな気持ちを押さえ、私は自分のと遼君の線香花火に火を付けた。
遼君は乱暴に持つから、火花が散る途中で、玉がぽとりと落ちた。
遼君は舌打ちをして立ち上がる。



「つまんないから帰る!」

「待って、もう一本だけ!」

なぜだか私は遼君を引き止め、線香花火を手渡した。



「あのね、線香花火は振り回したりしないで静かに持って…」

「早く火、つけろよ!」

急かされ、仕方なく火をつけた。
遼君はまた振り回してる。
そんなことしたら、また火花が出る前に終わるのに。



なんだかとても腹立たしくて…



気が付けば、私は遼君の背中を突いていた。



派手な水音がして、一瞬遼君の姿が見えなくなった。
でも、すぐに顔を出して、もがきながら流されていく。



(ふふふ……)



さようなら、遼君…
私の言うことを聞かないから、こんなことになるんだよ。
遼君なんて誘わなきゃ良かった。



私は線香花火に火を付けた。
パチパチと爆ぜる火花がとても可愛い。
うん、ひとりでやれば良かったんだよ。
遼君はもう見えなかった。
来年からも、私はひとりで花火をしようとその時思った。
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