赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
45 / 734
side 美幸

しおりを挟む
「やっぱり、カズ、高い所が苦手なんだ。」

アッシュさんは横目で兄さんの顔を見ながら、くすくす笑う。
 兄さんの弱点に気付いたのは、どうやら私だけじゃなかったみたい…



「そりゃあ、確かにあまり好きじゃないが、別になにがなんでも無理だなんて言ってるんじゃないぞ。
ただ、あんなに長い間並んでまで、わざわざ危険な想いをするのが馬鹿馬鹿しくていやなだけだ。
それに、美幸や野々村さんは本当に高い所が苦手なんだし、どうせなら皆が一緒に楽しめるものの方が良いじゃないか。」

 兄さん…
私達を言い訳に使うのはやめて下さい…



「そんなこと言って、やっぱり怖いんじゃないのかなぁ?」

 「そうじゃない…俺は……」

 「じゃあ、乗ろうよ!
 怖くないんでしょ?」

 「あ、な、何をする!」



アッシュさんは兄さんの腕をがっしりと掴んで、そのまま兄さんをひっぱって長い列の最後に並んだ。
その列は、ものすごい高さから降りて来て、ぐるぐると何回も回転するっていう超怖そうなジェットコースターで、しかも立って乗るもの…
頭上からは猛スピードで走るコースターの走行音と、女性の甲高い悲鳴が聞こえて来る。
それを聞いてるだけでも、眩暈がしそうな乗り物だ。
 兄さんはまだアッシュさんになにやら言ってるみたいだけど、アッシュさんは兄さんの腕を離さない。



 「美幸さん、私達、あそこで待ってましょうか?」

 野々村さんが指差したのは、近くのベンチ。
 私達は、飲み物を買ってそこに座りこみ、兄さん達の順番が来るのを待つことにした。



 「青木さん、大丈夫かしら?
きっと、青木さんは高い所が苦手なんですよね?」

 「やっぱり、野々村さんもそう思う?
 絶対、そうだよねぇ…
なのに、突っ張っちゃって…」

 「美幸さんは、ご存知なかったんですか?」

 「うん、兄さんとは年も離れてるし、その上、兄さんは早くに家を出てるからね。
それに、兄さんは弱みを見せるのが嫌いな人だから…」

 「……そうですよね。」

ただの相槌だったのかもしれない。
だけど、その時の野々村さんの声は、妙に実感がこもってるような気がして……私は、そのことがなんとなくひっかかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:180,307pt お気に入り:7,845

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,359pt お気に入り:138

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:653pt お気に入り:449

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,290pt お気に入り:91

腹黒上司が実は激甘だった件について。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:418pt お気に入り:139

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:17,341pt お気に入り:1,241

そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:6,056pt お気に入り:138

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

BL / 完結 24h.ポイント:1,480pt お気に入り:2,625

処理中です...