1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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白い季節にありがとう

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「な……」

目の前に広がる凄惨な光景に、俺は言葉を失った。
あたりに立ちこめるいやなにおいは飛び散った血肉のにおい……



「そ、そんな……」



最近、勢力を増し狂暴化した魔物の討伐隊に入った俺は、昼夜を問わず、魔物共を探し回っていた。
なのに、奴らは俺達の目をかいくぐり、また村を襲った。
村は完膚なきまでに痛めつけられ、すべての生き物が八つ裂きにされていた。
あたりに広がる光景は、さながら地獄絵図のようなもので、隊員達はあまりの酷さに目を背けた。



「ジョー……大丈夫か?」

俺を気遣ってくれたマイルスに頷いたが、大丈夫なわけがない。
だって、この村は俺の住んでた村なんだから……







(あと少しだ……)



それから二年の歳月が流れた。
俺は、愛しい家族を奪った魔物達への憎しみを募らせ、今まで以上に魔物の討伐に励んだ。
そんな俺のことを仲間達は気丈だと誉めてくれたが、それは偽りの俺だった。
ある時を境に、俺はおかしな妄想を目にするようになった。
夜になると、たとえようのない不安に襲われ、少しも眠れなくなった。
食欲もなくなり、俺は精神的にも肉体的にも酷く病んでいることに気がついた。
魔物の討伐はおろか、ごく普通に生活することさえままならなくなった俺は、親戚の許へ行くと言って討伐隊を後にした。
そんなことは嘘だ。
俺が目指したのは、もう誰一人として住む者もいなくなった故郷の村。

戻るのは怖かった。
一応の処理はしたとはいえ、あの当時の凄惨な光景がまたよみがえってくるのではないかと考えると恐怖で足がすくんだ。



「あ……あぁ……」



しかし、俺の予想は裏切られた。
村は真っ白な雪でどこもかしこも覆い尽くされ、あの日のことを思い出させるものはなにもなかった。
ここが俺の故郷だということさえすぐにはわからない程に、真っ白く染められていた。



(こんなに雪が積もったのは初めてだ……)



そう思った時、天使の羽根のようなものがゆっくりと舞い降りて来るのが目に映った。
雪だ…白く軽やかな雪だった。


なのに、俺は冷たさも寒さも少しも感じない。



(……ここだ……)



大きな林檎の木を目印に俺の家があった場所をみつけ、そっとその近くに横になった。
柔らかな雪の感覚は、不思議と暖かさを感じる気さえした。



俺は、心地良い安心感に包まれた。
もう怖れるものはなにもない……ここの景色のように真っ白な気持ちを感じた。
しばらくすれば、この優しい雪は俺の姿も真っ白に染め上げてくれる……



(みんな、遅くなってごめんな……)



閉じた俺の瞼から、熱いものが一滴流れて落ちた。



~fin~
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