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背筋も凍る
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「食事、おいしかったね。」
「そうね。
お店の雰囲気もとってもおしゃれで素敵だったし……
でも、もう少し、便利な所だったら良いのに……」
「だよな。
車がないと絶対行けないもんな。
……それにしても、本当にこの道で大丈夫なのか?
やけに辺鄙な山道じゃないか……」
「だけど、聡史さんがこっちの方が近道だって……」
この日、私達は、彼の友達の聡史さん達とダブルデートに出掛けた。
二人ずつ、二台の車に分乗して、朝からドライブを兼ねて久々の遠出をした。
聡史さんが連れて行ってくれた山の上のレストランで夕食を済ませ、私達は車を連ねて人気のない山道を走り続ける。
「なぁ、のぞみ…
由佳ちゃんに電話してみろよ。
本当にこの道で間違いないのかって……」
「大丈夫だと思うけど……」
私は彼に言われるままに、由佳さんに電話をすべく、スマホをバッグから取り出した。
「あれ…?」
彼がそう呟くと、車はゆっくりと空き地に周りこんで停止した。
前を見ると、そこには聡史さんの車も停まってた。
「どうしたんだろうな?
……おい、聡史…どうしたんだ?」
彼は、窓を空けて聡史さんに声をかけた。
「面白いもん、みつけた。」
「面白いもの?」
車を降り、聡史さんの指差す先を見ると、そこには「夏季限定・ホラーハウス」と書かれた朽ち果てた木製の小さな看板が立っていた。
「よくそんなのに気付いたな。」
「まぁな。
なぁ、面白そうだし、ちょっと寄ってみようぜ。」
そう言うと、聡史さんと由佳さんは矢印の方向にどんどん歩き始める。
「慎吾……私……」
「……わかってるって。」
恥ずかしいけど、私はかなりの怖がりで、子供の頃からオバケ屋敷が大の苦手。
大人になった今でも絶対に入れない。
しかも、あたりは真っ暗で木に挟まれた細い道。
オバケ屋敷にいかなくってもそれだけでも十分怖い。
「わぁ、すっげぇ大きな木!」
小道を進んで行くと、その先は拓けた場所になっていて、見上げるような大木が佇んでいた。
大きく手を広げ、月明かりさえも覆い隠している。
「……なんか、雰囲気ありすぎでしょ……」
大木のすぐ傍に、お目当てのホラーハウスはあった。
「背筋も凍る恐怖体験」
「別世界への不思議回廊」
「決して入ってはいけない」
陳腐な言葉が貼り紙されたその建物は、それらがなければただの廃屋のように見える。
「そうね。
お店の雰囲気もとってもおしゃれで素敵だったし……
でも、もう少し、便利な所だったら良いのに……」
「だよな。
車がないと絶対行けないもんな。
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二人ずつ、二台の車に分乗して、朝からドライブを兼ねて久々の遠出をした。
聡史さんが連れて行ってくれた山の上のレストランで夕食を済ませ、私達は車を連ねて人気のない山道を走り続ける。
「なぁ、のぞみ…
由佳ちゃんに電話してみろよ。
本当にこの道で間違いないのかって……」
「大丈夫だと思うけど……」
私は彼に言われるままに、由佳さんに電話をすべく、スマホをバッグから取り出した。
「あれ…?」
彼がそう呟くと、車はゆっくりと空き地に周りこんで停止した。
前を見ると、そこには聡史さんの車も停まってた。
「どうしたんだろうな?
……おい、聡史…どうしたんだ?」
彼は、窓を空けて聡史さんに声をかけた。
「面白いもん、みつけた。」
「面白いもの?」
車を降り、聡史さんの指差す先を見ると、そこには「夏季限定・ホラーハウス」と書かれた朽ち果てた木製の小さな看板が立っていた。
「よくそんなのに気付いたな。」
「まぁな。
なぁ、面白そうだし、ちょっと寄ってみようぜ。」
そう言うと、聡史さんと由佳さんは矢印の方向にどんどん歩き始める。
「慎吾……私……」
「……わかってるって。」
恥ずかしいけど、私はかなりの怖がりで、子供の頃からオバケ屋敷が大の苦手。
大人になった今でも絶対に入れない。
しかも、あたりは真っ暗で木に挟まれた細い道。
オバケ屋敷にいかなくってもそれだけでも十分怖い。
「わぁ、すっげぇ大きな木!」
小道を進んで行くと、その先は拓けた場所になっていて、見上げるような大木が佇んでいた。
大きく手を広げ、月明かりさえも覆い隠している。
「……なんか、雰囲気ありすぎでしょ……」
大木のすぐ傍に、お目当てのホラーハウスはあった。
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