158 / 239
桜、満開
1
しおりを挟む
「本当にあなたっておかしな人ね。
でも……おいしそうだから、いただくわ。」
「え……そ、それじゃあ……」
「祐介君、よろしくね。」
にっこりと微笑む奈緒美さんに、俺は思わず飛び上がり、そして思いっきりすっころんだ。
「もう…何やってんの。」
奈緒美さんは俺を優しく助け起こしてくれた。
「あ、ありがとう。」
「ねえ、祐介君、せっかくだから桜見に行こうよ。」
「え……」
「この先の堤防…すごく綺麗よ。」
奈緒美さんは鯉のぼりの俺を少しも気にせず、どんどん歩く。
歩きながら、俺は、藤森達にフランスの風習を教えてもらったことを話した。
「あいつら、けっこう良い奴なんですよ。」
「そ、そうなんだ。」
奈緒美さんはなぜだかくすくす笑う。
なんだかまだ信じられない。
奈緒美さんが俺の告白を受け入れてくれたなんて。
俺の働くレストランのチーフをしている奈緒美さんは、俺より3つ年上だ。
初めて会った時から、ずっとひかれてた。
クールでしっかりしてて、だけど、誰にでも優しい奈緒美さんは俺の憧れの人だった。
今の店で働き始めて一年近くになるけど、なかなか告白をする勇気はなくて……
(本当に藤森達のおかげだな。)
「見て!」
「わぁ、すごいっ!」
川の両側がピンク色に染まってた。
「もうこんなに咲いてたんだ。」
「そうよ。急に暖かくなったから、花も慌てて咲いたみたいよ。」
はらはらと花びらの舞う桜の道を俺達は並んで歩いた。
相変わらず、まわりの人達は俺を見て笑ってる。
「あ、奈緒美さん……ごめんね。なんか、俺、笑われちゃって……」
「良いじゃない。
みんなを笑顔にするなんて、芸人さんでも難しいわよ。
……でも」
でも?
俺は奈緒美さんの次の言葉を待った。
「次のデートの時は、普通の格好で来てね!」
「も、もちろん!」
最高の一日だった。
だからこそ、その幸せが怖くて……俺は気になったことを質問した。
「奈緒美さん……まさか、これってエイプリルフールじゃないよね?」
「エイプリルフールよ。」
「え、えぇっっ!!」
俺の驚いた顔を見て、奈緒美さんはゲラゲラ笑った。
そして、混乱する俺をそっと抱き締めて、「あなたって本当に可愛い」って囁いてくれた。
(だ、大丈夫かなぁ……)
なんだかまだ不安はあるけど… 今はとにかく素直にこの喜びを受け止めよう。
だって、桜がこんなに綺麗なんだから。
(あ……)
不意に手を握られた。
柔らかな感触に俺は戸惑い、何も言えないまま桜に目をやり…奈緒美さんと最高のお花見を続けた。
でも……おいしそうだから、いただくわ。」
「え……そ、それじゃあ……」
「祐介君、よろしくね。」
にっこりと微笑む奈緒美さんに、俺は思わず飛び上がり、そして思いっきりすっころんだ。
「もう…何やってんの。」
奈緒美さんは俺を優しく助け起こしてくれた。
「あ、ありがとう。」
「ねえ、祐介君、せっかくだから桜見に行こうよ。」
「え……」
「この先の堤防…すごく綺麗よ。」
奈緒美さんは鯉のぼりの俺を少しも気にせず、どんどん歩く。
歩きながら、俺は、藤森達にフランスの風習を教えてもらったことを話した。
「あいつら、けっこう良い奴なんですよ。」
「そ、そうなんだ。」
奈緒美さんはなぜだかくすくす笑う。
なんだかまだ信じられない。
奈緒美さんが俺の告白を受け入れてくれたなんて。
俺の働くレストランのチーフをしている奈緒美さんは、俺より3つ年上だ。
初めて会った時から、ずっとひかれてた。
クールでしっかりしてて、だけど、誰にでも優しい奈緒美さんは俺の憧れの人だった。
今の店で働き始めて一年近くになるけど、なかなか告白をする勇気はなくて……
(本当に藤森達のおかげだな。)
「見て!」
「わぁ、すごいっ!」
川の両側がピンク色に染まってた。
「もうこんなに咲いてたんだ。」
「そうよ。急に暖かくなったから、花も慌てて咲いたみたいよ。」
はらはらと花びらの舞う桜の道を俺達は並んで歩いた。
相変わらず、まわりの人達は俺を見て笑ってる。
「あ、奈緒美さん……ごめんね。なんか、俺、笑われちゃって……」
「良いじゃない。
みんなを笑顔にするなんて、芸人さんでも難しいわよ。
……でも」
でも?
俺は奈緒美さんの次の言葉を待った。
「次のデートの時は、普通の格好で来てね!」
「も、もちろん!」
最高の一日だった。
だからこそ、その幸せが怖くて……俺は気になったことを質問した。
「奈緒美さん……まさか、これってエイプリルフールじゃないよね?」
「エイプリルフールよ。」
「え、えぇっっ!!」
俺の驚いた顔を見て、奈緒美さんはゲラゲラ笑った。
そして、混乱する俺をそっと抱き締めて、「あなたって本当に可愛い」って囁いてくれた。
(だ、大丈夫かなぁ……)
なんだかまだ不安はあるけど… 今はとにかく素直にこの喜びを受け止めよう。
だって、桜がこんなに綺麗なんだから。
(あ……)
不意に手を握られた。
柔らかな感触に俺は戸惑い、何も言えないまま桜に目をやり…奈緒美さんと最高のお花見を続けた。
0
あなたにおすすめの小説
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
忘れるにも程がある
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたしが目覚めると何も覚えていなかった。
本格的な記憶喪失で、言葉が喋れる以外はすべてわからない。
ちょっとだけ菓子パンやスマホのことがよぎるくらい。
そんなわたしの以前の姿は、完璧な公爵令嬢で第二王子の婚約者だという。
えっ? 噓でしょ? とても信じられない……。
でもどうやら第二王子はとっても嫌なやつなのです。
小説家になろう様、カクヨム様にも重複投稿しています。
筆者は体調不良のため、返事をするのが難しくコメント欄などを閉じさせていただいております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
愛想笑いの課長は甘い俺様
吉生伊織
恋愛
社畜と罵られる
坂井 菜緒
×
愛想笑いが得意の俺様課長
堤 将暉
**********
「社畜の坂井さんはこんな仕事もできないのかなぁ~?」
「へぇ、社畜でも反抗心あるんだ」
あることがきっかけで社畜と罵られる日々。
私以外には愛想笑いをするのに、私には厳しい。
そんな課長を避けたいのに甘やかしてくるのはどうして?
婚約者と親友がやって来て「愛し合ってる」とか言ってきたうえ婚約破棄を宣言されてしまいました。が、父が復讐しました。
四季
恋愛
婚約者と親友がやって来て「愛し合ってる」とか言ってきたうえ婚約破棄を宣言されてしまいました。が、父が復讐しました。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 190万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる