クズはゴミ箱へ

天方主

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第一章 クズは牢獄へ

第2話

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「テリスの機能って、別にスマホでも事足りるような気がするんだけどそれはどうなの?」



 これほどAIと密接に且つスムーズに話せることが凄まじいのはよくわかる。しかし一方で、これくらいならスマートフォンでもできてしまうのではないかと感じてしまう。



 しかも、スマートフォンにあってテリスにはないものがある。



 視覚情報だ。



 これがないとなると、スマートフォンよりも不便と言っても過言ではないような気がする。そんな考えが黒水の頭に浮かんだ。



 だが、テリスはまるで聞かれることがわかっていたかのように、



『黒水様のご質問にお答えいたします』



と返した。



『即時に情報を得られる点、充電が不必要な点、そしてテリスが黒水様に関する情報を知り尽くしている点から、テリスとスマートフォンの利便性は乖離しています。視覚的な情報を必要とする場合は是非スマートフォンをご使用ください。ですが、それ以外のことでしたら私、テリスが黒水様のお役に立てるかと思います』



 そして、とテリスは話を続ける。



『一昨年からテリスはver.2.0に更新され、様々な機能が追加されました。それを一括りでは、接触情報の獲得と表すことができます』



「接触情報?」



『左様でございます。つまり、私テリスが触れています黒水様の体から情報を獲得し共有を行うことが可能になったということです』



「うーん、わかったような、わかってないような……」



『具体的には、黒水様の体重が昨日よりもどれほど増減したか、脈拍は正常か、そういったような黒水様の健康状態の管理が可能となりました』



「……なるほどねえ」



 健康状態の管理、というのはあまりそそられないと感じる黒水。



『ただ、接触情報から可能になった、最も有効な機能は<身体能力の大幅な向上>と言われております』



「ん、どういうこと?」



 非常に単純な言葉だったが、黒水には全く想像がつかなかった。



「接触情報から黒水様の体の動きを私テリスが完全にサポートし、最大限の力を引き出すという機能です。例えば、技術がなくても必要量の筋肉を有していればテリスを着用しているだけで100メートルを9秒台で走れるようになったり、時速160キロメートルの球が投げられるようになったりする、ということになります」



「そ、れは……、スマホ超えてるわあ」



 テリスを最大の技術革新と認めざるを得ない。ただ着るだけでドーピング以上の身体能力が手に入るということなのだろう。



 心臓の音で自分が興奮していることがよくわかる。



「えっ、じゃあ今俺が全力で走ったらめっちゃ速いってこと!?俺100メートル15秒台なんだけどっ!?」



『接触情報の獲得機能は入学式終了後にインストールされますので、現在は不可能です。楽しみにお待ちくださいませ』



「うおお、まじかー!入学式はやく始まんねーかなあ!」



『黒水様の正面100メートル先にプラットフォームがございます。そこで電車に乗り、東京地下第四高等学校に向かってください。私テリスがご案内いたします』



 左の手首を見てみると、制服テリスに直接、デジタル表記の時間が表示されていた。



 午前7時30分。



 まだ入学式まで1時間もある。



 しかし、この世界、そしてテリスのことを知った今、黒水の興奮状態は収まることを知らない。



 この世界なら自分を変えることができるかもしれない。



 この世界なら自分の将来が楽しみになるかもしれない。



 そんな思いが黒水に芽生えていた。



「走るか――」



 この100メートルを走って、少しでも気持ちを発散させようじゃないか。



 ……15秒で。
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