恋愛フィクサー〜婚約破棄計画〜

梅丸みかん

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第4話 私のお義兄様

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 私には義理の兄がおります。お父様は何れ私と一緒になってこのクロウ侯爵家を継いでもらう為に義兄様を養子にしたのです。

「初めまして。僕の名前はラッセル。今日から君の兄になるんだよ。よろしくね」
 そう言って初めて会ったお義兄様は深緑の瞳を細めて柔らかく微笑んだのです。
 短く切りそろえた少し癖のある黒髪が春風に揺られて光りのせいでキラキラしているのが印象的でした。

 それが5才の時でした。このときから私は義兄様を大好きになりました。もちろん、幼い私は恋する気持ちは分かりませんでしたからただ優しい義兄様を兄として慕っていただけかも知れません。

 それが恋だと分かったのは10才で王妃様主催のお茶会に招かれた後でした。

 このお茶会は第一王子の婚約者を選ぶためのイベントであることは周知の事実。

 高位貴族の子女を招いて行われるのです。ですからクロウ侯爵の長女である私が招待されるのも当然のことなのです。

 王妃様の招待を断るわけにはいきません。

 私は気が乗らないままお茶会に参加することになりました。

 お茶会ではなるべく目立たないように地味な服装で参加し、なるべく王妃様や王子様の目に止まらないように静かにしておりました。

 ですが、返ってそれが注目されるとは……。

 明らかに私の誤算です。

 派手な衣装に身を包む令嬢達の中で一人だけ地味な衣装に身を包む私は慎ましやかに見られ、言葉の少なさは身の程を弁えた謙虚さを表していたと評価されてしまいました。
 
 更にお父様の王家に尽くす功績や私の領地での評判は次期王妃としても好ましいとされたようです。

 決定的であったのは、お義兄様の存在です。本来なら一人っ子の私でしたがお義兄様がいるので後継者の問題はないとされてしまったのです。

 こうして私は第一王子である王太子の婚約者にされてしまいました。

 もちろん、私の気持ちなんて二の次です。

 高位の侯爵令嬢とは言え、王族の言葉が優先されるのは当然です。

 私はこの決定を聞いてから涙が涸れるほど泣き続けました。

 なんでこんなに哀しいのか? なんでこんなに王子様と結婚したくないのか?

 普通の令嬢なら諸手を挙げて喜ぶのになんでこんなにショックを受けるのか?

 そう考えたとき、私の中にお義兄様の事が浮かびました。

 結婚したらお義兄様と離れなければならない。

 そして、私がこの家を出たらきっとお義兄様は結婚してこの侯爵家を継ぐことになる。

 お義兄様が結婚……。

 お義兄様以外に触れられるのも嫌だけど、お義兄様が私以外に触れるのも嫌。

「お義兄様、私はどうしたらいいのでしょう? 王家には嫁ぎたくないのです。だって私はずっとお義兄様が」
 その後の言葉は続きませんでした。

 お義兄さまが私の唇にそっと自分の人差し指をあて遮ったのでした。

 眉を寄せて苦渋の表情をしながら。

 私は苦しげに歪むお義兄様を見て直ぐに察しました。

 ああ、これ以上は言ってはいけないのだと……。

 王家の決定に逆らうわけにはいきません。

 余計な事を言ってはいけません。

 お義兄様の迷惑になってしまうから。

 侯爵家の迷惑になってしまうから。

 私は黙ってこの運命を受け入れなければならないのでしょう。

 
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