ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!

あんり

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第2章 いよいよ開幕!――物語は“影”の深層へ!

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(ケンブルク兵士ら)

目の前は闇。
瞼も開けているのか、閉じているのか、時間がどれくらい経過しているのか……分からない。
もうどれくらいの時間が過ぎたのか?

肌をじりじりする太陽の光が、夜は明け、日が登りしばらく時間が過ぎていることを告げる。

暑い、喉が乾いた。飲まされるのは、薄い塩水だけ。
イスカダルの奴らがなにやら準備しているようだが、なんの準備をしているか分からない。
しばらくすると、火がつけられたことがわかる。なんに火をつけた?
肌で感じる火の様子から、いくつかの火があるようだ。熱風がこっちに来て余計に暑い。

はぁ…はぁ…
もう、抵抗する気力は誰もが捨てている。
ただ、先の予測ができない。
せめて視界が開けていれば、この現状を把握できるのだが。

ん?人が集まりだしたか?
なんかの圧がいくつも感じる。

「「「「「「「うぉー」」」」」」」

いきなりの雄叫びに、俺たちの体はビクンと跳ねた。どうした?何が起こるんだ?

そうしていたらどうだ?

ジュージューと音がしだして、その直後鼻に強烈に吸い込まれた匂い。

にっ、肉だ!食いてぇ…
腹がうるさい。誰の腹も、……みんなの腹が大合唱だ。

匂いも直撃だ。
肉の焼ける音。あちらこちらでジュージュー聞こえる。
これはなんだ?
肉と一緒に、腹をガツンと殴るような食欲が湧き上がる。
この食欲が脳内の想像を膨らませ、たまらない衝動になる。

思わず、ゴクリッ。
腹が空いた。とにかく腹が減ったぞ。
クソッ、お前らだけ美味いの食べる気か?

ジュー、ジュー、ジュー!
たまらん、たまらん、たまらん、食いたい。

音に加え、この匂いは俺を狂わす。
みんな、腹を空かせ、腹が怒りを爆発させるように、あちらこちらからグーグーなっている。俺も、こいつらと一緒だ。

喉が乾いていたはずなのに、今ではどうだ?口の中が唾液で溢れてる。

「うまいっ、最高だ!」
「ガリガリクゥーは最高だな」
「新しい調味料、これも癖になるな」
「ああ、ピリッってするのがいいぞ」
「俺はたっぷりかけてみたい。試すぞ」
「うっ、うんっめー」
「飯が美味いのは、最高だな」
「ああ、美味すぎて、食事の時間が最近は楽しみだ」
「だな、この豪快に肉を焼くってのもいいな」
「鶏肉に、塩。あ、トマートゥのソースがあれば無限に食える」

あー、あー、食いてぇ。
匂い、音、くそっ。
「なぁ、俺たちにも、そいつを与えてくれないか?」そう言いたいのに、猿ぐつわをかまされているから、ただ、うーっ、うーっ、うーっとしか発せない。
たまらん、食わせろっ。
脳内が欲しい、欲しい、食わせろと騒いでいる。俺だけじゃねぇ。
“食わせて貰えねぇ”こんな美味そうな匂いをして、何たる拷問。
お腹と背中がくっつくってこと、このことかよ。死ぬほど、食いてぇ。

「よし、こいつらの目隠しを取ってやんな」

目隠しを外された仲間が次々に唸る。
聴覚と臭覚だけじゃねぇ。今度は視覚まで与えられた情報は残酷だった。

肉の固まりを頬張るイスカダルのヤツら。
肉にがぶりついてやがる。たまんね。
ジュージュージュー!ジュアー。
クソッ、食いてぇ。

こんな拷問あるかよっ。
さっきから見せられて、お預けされた犬がハァハァハァ言ってるようなもんだぜ。

そんな状態がしばらく続いた。

誰かが呟いた。
「奴ら可哀想だな、恵んでやってもいいぜ、欲しいか?どうだ?」

肉、肉、肉。
ゴクリ、喉がなる、俺だけじゃねぇ。

「食べさせてくれたら……恩にきる」

「欲しいなら食べさせてやるよ。」

「ありがたい…」

俺たちに与えられたのは、ほんの小さな1切れの肉だった。

噛んだらどうだ。塩、そして、辛味が2つ。それが脳に電流が走る―――それほどの衝撃!この世にこんな美味いのがあったのか?

我々が今までも、多分これからも二度と口にすることなんて―――絶対に無いだろう。

こいつらは、イスカダルでは、当たり前に食べられているのか?
そこまで食の違いがあるのか?
見るとどうだ、奴らは喜んでためらいなく食べてやがる。ありがたがってる様子なんてねぇ。ただ、当たり前のように普通に楽しみながら食べている。

これが、イスカダルの当たり前なのか?

あとは、なんだ。次はなんだ!
スープだと?茶色いスープ。ちと臭いぞ。
こんな臭いのはいらねぇぞ。

うわ、そこまでやるのか?
イスカダルの奴ら。俺たちの顎を持ち上げ、あの茶色いスープを流し込んだ。

クソッ―――美味いじゃないかっ。
抜ける芳香な香り、旨味。
いつまでも口に残る余韻。

もっと……食いてぇ。
1切れと1口なんて酷いじゃないか?

「もっと……くれ」
「たりない、お願いだっ、それ食わせてくれ」
「あの肉はなんだ?食べたことないぞ」
「とんでもなく美味いぞ……はぁ」

仲間が次々に叫ぶ。
俺も―――足りない。

「残念だな。お前たち、この味を知っちまったんだ。これはな、イスカダル、いや、このマーシュ領では当たり前なんだよ。本当の拷問はこれからだ。食べたい欲求にどれだけお前らが耐えられるか、楽しみだよ。」

「うわわわー、知らなきゃ良かったぜ」
「もう、二度とこれを食べられないなんてっ」



(ルークside)

カイト坊ちゃんからの司令。
ケンブルクの奴らに“与えない”という拷問。
奴らのイライラや、空腹がピークに達した時に与える、さらなる司令。
次は“1口だけ与える”ということ。

美味い味を“1口だけ与えて、味を知ってもらう”ということらしい。

それが奴らにとっては拷問に値する試練。“満足に与えて貰えない。そしてもう二度と食べられない。”

目の前の私たちが美味そうに食べている横で、奴らは耐える拷問を受け続けるんだ。

なかなか、えぐい事をするな。
こんな拷問、思いつくなんて酷だな。
やっぱりカイト坊ちゃんは、味方で良かった。
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