ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜

蒼月丸

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第三・五章 戦士達の羽休め

閑話35 ベティとメディの脱獄作戦③

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 ベティ、メディ、プラムの3人は、地下牢から脱出して目の前の光景に視線を移す。そこは広々とした洞穴であり、静かな音が響き渡っていた。
 しかしその先には手強いモンスター達がいるので、油断はならないだろう。

「この先に出口があるみたいだけど、ベヒーモスがいる限りは油断できないわね」
「こんな時、八犬士達がいてくれたら……楽に突破出来たのかも知れませんね……」

 プラムがポツリと心から呟いた直後、ベティは彼女の前に接近する。そのまま額に狙いを定め、デコピンを当てたのだ。

「痛っ!」

 プラムは痛みで額を抑えてしまい、涙目となってしまう。まさかデコピンされるとは思ってもいなかっただろう。

「アンタね。確かにこの様な強敵は八犬士達が必要だけど、私達は彼等に頼らずに自分達の力で突破したいの。それにこんなところを見られたら、皆から情けないと思われるじゃない」

 ベティからの正確な指摘を受けたプラムは、あることを思い出しながらハッと気付いてしまう。
 自ら困難に立ち向かうと決意したのに、八犬士達が来る事を一瞬願っていた。つまりそれは弱気な発言をしていた事であり、自らの信念と行動に反していた事は確実だ。

「うう……自分が恥ずかしくて情けないです……」

 プラムは恥ずかしさのあまり顔を両手で覆ってしまい、大量の汗を流しながら赤面していた。まさか弱気な発言をしてしまった事で、恥ずかしさを感じていたのだろう。

「ともかくこの洞穴から抜け出しましょう! 一刻も早く追っ手が来る前に!」

 メディの合図にベティとプラムは頷き、彼女達はそのまま急いで駆け出し始める。恐らく敵は自分達が脱走する事に気付く筈。その前に逃げる必要があると心から思っていたのだった。

 ※

 ベティ達はダッシュしながら、出口に向かって駆け出していた。追手から逃れる為にも精一杯駆け出すしかなく、立ちはだかる者に関しては容赦はしないのだ。

「邪魔する奴は容赦なく倒さないとね。プラム、ここにいるモンスター達は分かる?」
「はい! ゴブリン、インプ、ゴースト、キラーゾンビ、スケルトンです!」
「アンデッド系ですね。私の力ならやれるかも知れません!」

 プラムの説明を聞いたメディは、自分の力ならやれると心から信じている。同時にゴブリン達が一斉に姿を現し、彼女達の前に立ちはだかってきた。しかもその数は50以上だ。

「数は50ぐらいか。2人とも、やれる?」
「ええ。問題ありません」
「このぐらいでも戦えます!」

 ベティからの質問に対し、メディとプラムは問題なく戦闘態勢に入る。モンスターぐらいで足を止めるのはいくら何でも恥ずかしいと言えるし、ここで戦わなければ元勇者パーティーとして失格だ。因みにプラムは冒険者だが。

「よし! まずは私から行くわ! フレイムボール!」

 ベティは杖から次々と火の玉を発射しまくり、モンスター達へと次々と放ちまくる。彼等は攻撃を喰らって次々と倒れてしまい、金貨となって地面に落ちてしまったのだ。

「アンデッドなら、これで終わらせます! ホーリーマジック!」

 メディは光の魔術による光弾を次々と放ち、スケルトンとキラーゾンビに直撃して爆発を起こした。彼等もまた光に弱いので、やられて金貨にされてしまうのは当然と言えるだろう。

「私も行きます! はっ!」

 プラムは剣と盾を構えながら、ゴーストを次々と切り裂いて倒していく。相手が手強いかも知れないが、ここで引くわけにはいかない。元勇者パーティーであるベティとメディがいる以上、下手な行動は許されないだろう。

「よし! モンスターは半数に減らしたみたいね。今から一気に攻めさせてもらうわ!」

 メディは虹色の光弾を生成したと同時に、次々と残りのモンスターに放ちまくる。放たれた光弾はモンスターにくっついたと同時に、そのまま爆発を起こそうとしている。

「これが私の新奥義、レインボーボム!」

 ベティが宣言した直後、レインボーボムはモンスター達に付着したまま大爆発を起こす。そのままモンスター達は金貨へと変化し、地面へと落ちてしまった。
 これでここにいるモンスターは全滅し、無事に先へと進むことができたのだ。

「よし! これで敵は全滅ね!」
「ええ。けど、油断はできません。まだまだこれからです!」

 ベティが指を鳴らしながら敵がいない事を確認するが、メディは同意しながら真剣な表情で前を向く。まだベヒーモスもいる以上、ここから脱出できるのはそう簡単とは言えない。奴を相手にするのは免れないと言えるだろう。

「そうですね。ともかく先に進みましょう! 道草を食っている暇はありません!」

 プラムの合図にベティとメディは頷き、急いでその場から駆け出し始めた。敵兵も自分達が脱走している事に気付こうとしているし、追いつかれる前に急がないといけないからだ。

(いずれにしても敵は私達を追ってくる……何が何でも急がなければ!)

 プラムは心の中で焦りを感じながら、急いでスピードを上げていく。これが現実にならない事を祈るばかりだ。

 ※

 ベティ達が逃走をしている頃、Aブロック基地内ではゴブリンの看守が地下牢に入ってきた。囚人達が全員揃っているのか確認をしに来ているが、この様子だと逃げたのが分かるのも時間の問題だ。

「では、確認を……ややっ!」

 看守が地下牢にいる人物を確認すると、ベティ達の牢屋は空っぽとなっていた。脱走したのは確実であり、この光景に看守が驚くのも無理なかった。

「やられてしまったか……だが、奴等はベヒーモスが足止めをしてくれる筈だ! こうなったらすぐに連絡せねば!」

 看守は急いで警報のスイッチを押した途端、警報の音が基地内全体に響き渡る。更にあちこちに置かれている赤ランプも点灯し始め、兵士達が何事かと騒ぎ出してしまった。

「なんだ⁉」
「こんな夜中なのに……」

 兵士達がザワつきながら疑問に感じる中、放送用のスピーカーが鳴り響き始める。その様子だと一刻を争う緊急事態であり、兵士達は全員スピーカーに視線を移した。

『緊急事態だ! 3名の囚人が脱走した! 直ぐに奴等を捕らえてくれ! 繰り返す! 3名の囚人が脱走した! 直ぐに奴等を……』
「マジかよ! こうなったら寝ている場合じゃないぞ!」
「ベヒーモスが足止めをしようとしているが、俺達も急ぐぞ!」

 兵士達は慌てながら囚人達を捕まえる準備を行い、彼等は一斉にロッカールームへと向かい出す。彼等は全員寝巻のままなので、このままで行ったら丸腰其の物としか思えないだろう。
 ※

 警報はドノグラーの寝室にまで響き渡り、彼は突然の警報に起きてしまう。同時に今の状況をすぐに察した後、冷静さを取り戻してニヤリと笑っていた。

「いくら何でも奴等は逃げられると思わない。何故ならこの俺が手懐けているベヒーモスがいるからな。いくら奴等でもあの怪物には敵わないだろう……」

 ドノグラーは不敵な笑みを浮かべた後、そのまま眠りにつき始める。ベヒーモスがいるから大丈夫だと思っていたが、これが思わぬ大誤算を生み出す事を当時は知らなかったのだった。

 ※

 ベティ達が急いで走る中、警報の音が聞こえ始める。出口まであと少しなのに、警報が鳴ってしまった以上ピンチとしか言えないだろう。この状況に3人は大量の冷や汗を流してしまい、更にスピードを上げようとしているのだ。

「こうなったら全速力で駆け出さないと! 魔術でスピードを上げればこっちの物だから!」
「ええ! ですが、前を見てください!」
「前って……まさか⁉」

 ベティの指示にプラム達も同意するが、彼女は突然前方を指さす。ベティとメディもプラムが指さす方を見ると、大きな怪物が彼女達の行く手を阻んでいた。そう。この怪物こそ、ドノグラーが手懐けているベヒーモスなのだ。
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