ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

文字の大きさ
42 / 277
第二章 隠されたホムラの陰謀

第四十話 戦乙女達の決意

しおりを挟む
「よし、これで大丈夫やね」

 着替え終えた倫子達は、ストレッチをしながら体の筋肉をほぐしていた。変態スライムによってベトベトにされた分、身体を動かして気分を晴らそうとしているのだ。
 
「ええ……でも、今回の件は本当に最悪でした……」
 
 ルリカは変態スライムにやられた事を俯きながら落ちこんでしまい、この様子にミミ達も同意せざるを得なくなるのも無理はない。

「今回の件、スライムと思って侮っていた私達にも責任はあるし、今でもその感触がまだ残っている……皆からの期待を背負って頑張っているのに……やっぱり私達って選ばれし者達じゃないのかな……」

 ヒカリは俯きながら自身の行動を悔やんでいて、お尻を抑えて涙目となってしまう。皆の期待を背負いながら戦っているのに、今回の戦いでは変態スライムによって災難に遭っただけでなく、子供の様に大泣きしてしまった。いい年して大泣きするのは悪くない事だが、本人としては恥ずかしいのも無理はない。
 その様子を見たミミは、落ち込んでいるヒカリの頭を優しく撫で始める。

「そんな事ないですよ。今回の失敗で挫けたら駄目。次のクエストで挽回すればいいだけだから」

 ミミは笑顔でヒカリに声をかけ、倫子も後に続いて彼女達に声を掛ける。
 
「ミミちゃんの言う通り。ウチ等ならやればできるし、この悔しさをバネにして頑張るのみや」 
「ミミちゃん、倫子さん……」

 ミミと倫子に慰められたヒカリは涙を拭き、エヴァ達も彼女達の元に移動して励ましに来たのだ。

「私達も傍にいるから心配しないで!」
「次、変態スライムが来たら倒しましょう!」
「アタイもやられっぱなしは嫌いだからな!」
「失敗は成功のもと。これからです!」
「今回のクエストで貴重な経験をしましたが、この悔しさをバネにして頑張ります!」
「私も諦めずに突き進むのみです!」

 エヴァ達の励ましを受けたヒカリは次第にやる気を感じ始め、すぐに立ち上がって落ち込みから回復する事に成功した。この様子だと心配する事はないだろう。
 
「そうね。ここで落ち込むのは良くないし、私達は私達で頑張らないと!」

 ヒカリはエヴァ達の励ましに笑顔で応え、そのまま皆で決意を固めながら円陣を組み始める。

「今回はやられてしまったけど、次のクエストで挽回あるのみ!明日も頑張りましょう!」
「「「おう!!」」」

 ヒカリの宣言に倫子達が一斉に大きな声で応え、彼女達はそのまま零夜達の元へと戻り始めた。この失敗を糧にして自身が強くなる為に……



「なるほど。ラリウスでのアークスレイヤーの基地については、ホムラ支部以外にも6箇所ぐらいあるという事か」

 零夜はトラマツの説明を受けながら、ウインドウのスクリーンに映っているグラディアスのマップを見ていた。
 その中の赤い点がアークスレイヤーの基地がある目印となっていて、黒いバツ印は既に陥落しているアークスレイヤーの基地が一つ示されている。この前零夜達が制圧したフルール基地だ。

「そうだ。奴等はこの前戦ったボルグレンやベクトルの他にも強い奴等が多くいる。気を引き締めて戦わなければ、全滅する恐れもあるからな」

 ノースマンからの説明に零夜が真剣な表情で今後の事を推測する中、ミミ達が茂みの中から姿を現し、彼等の元に駆け寄りながら戻ってきた。その様子だと落ち込みから回復している様で、心配する事はない様だ。

「もう大丈夫なのか?」
「うん。迷惑掛けてごめんね」
「気にするなよ。皆が無事で本当に良かったし、俺はそれが気掛かりだったからな」

 零夜は本心を伝えながら苦笑いをしていて、その様子を見たミミが彼をムギュッと強く抱き締める。
 零夜の本心はいつも側にいるミミが一番よく知っている為、それに対しての行動も得意なのだ。それを見ていたルリカは嫉妬で頬を膨らましていたのは無理もない。

「大丈夫よ、零夜。私達はこんな所で落ち込み続ける事はないし、クヨクヨしても何も始まらないからね」
「そうだな……さっ、早くギルドに戻って報告しないと」

 零夜達がクエストを無事に完了した事を伝える為、歩きながらギルドに戻り始めたその時、アークスレイヤーのアジトが遠くから見えた。
 その外観は和風の城だが、フルール基地よりもとても大きい。支部基地だけあってとてもレベルが高いのは言うまでもないだろう。

「あれがホムラ支部のアークスレイヤーのアジトか……」
「改めて見ると凄い場所だな……」

 ヒカリとソニアはアジトの外観に冷や汗を流しながらポツリと呟き、ミミ達も真剣な表情をしながら冷や汗を流していた。
 ホムラ支部基地はフルール基地よりもランクが高い分、強い敵も多くいる。その為、今後の戦いは苦戦が予測されるので、現在はクエストをしながらレベルを上げているのだ。
 
「どうやらそこが私達の狙う場所となるけど、今のレベルでは不利のまま。その為にも次々とクエストを受けておかないと!」

 ルリカは真剣な表情で強くなる決意の宣言をし、キララも彼女と同様に頷く。彼女達は零夜達に追いつける様日々精進している為、更にレベルアップする事を心から強く決意しているのだ。
 そのまま皆でホムラの街に帰ろうとしたその時、何処からか荷車の音が遠くから聞こえる。

「?」

 零夜が荷車の音のした方を向くと、それはマンモスのようなモンスターが檻を乗せた荷車を引いていて、男が荷車に乗ってタバコを吹いていた。どうやら何処かに向けて何かを運んでいるのだろう。

「行商人か?」
「いや、違う……あれは……奴隷商人だ!」
「「「奴隷商人!?」」」

 ノースマンの真剣な表情での説明にミミ達が驚く中、突然モンスターが歩くのを止めてしまった。
 すると男が零夜達の方に視線を移し、彼等の姿を見て警戒態勢を取っていた。しかもその手にはハンドガンが握られている。

「貴様等は選ばれし戦士達!べムール様に奴隷を献上しようとしているのを邪魔するつもりか!?」

 奴隷商人は零夜達に冷や汗を流しながら質問するが、それを聞いた彼は真剣な表情で彼を睨みつける。

「アンタはアークスレイヤーと協力関係か……なら、話は早い!」

 零夜はすぐに駆け出したと同時に奴隷商人に向かい、彼が放った弾丸を余裕で回避する。そのまま零夜は奴隷商人の服を掴み、そのまま背負投で勢いよく投げ飛ばした。

「うわっ!」

 奴隷商人は地面に頭を打ち付け、倒れたと同時に失神してしまう。その隙にソニアが針金で扉を開け、中にいた奴隷達を解放する。

「ありがとうございます!」
「気にするな。数は十人いるぞ!」
「すぐにギルドに報告しないと!」

 アミリスがギルドに向けて報告の準備をする中、零夜は失神している奴隷商人を縄できつく縛り付ける。

「よし!奴隷商人は縛った!そのままモンスターに乗ってホムラへ戻るぞ!」
「ええ!荷車は改装しておきます!」

 ルリカはトンカチとノミを構えてトンテンカンカンと荷車を改造し、馬車に姿を変えてしまった。彼女は職人スキルを持っているので、どんな物でも作れる事が出来るのだ。

「さあ、皆!すぐに乗って!」

 エヴァの合図で皆が馬車に乗り込む中、奴隷の二人がエヴァの方を向いてきた。二人は彼女と同じくシルバーウルフの獣人だが、一人はボブヘア、もう一人はショートヘアだ。

「エヴァ!無事だったのね!」
「あなたは……アーニャにサーシャ!」

 エヴァがアーニャとサーシャの姿に驚きを隠せず、三人は再会した事で喜び合いながら抱き合う。
 その様子に全員が彼女達の方を向き、疑問の表情をしていた。

「知り合いなのか?」
「私の……故郷の仲間なの……」
「「「ええっ!?」」」

 いきなり俯いたエヴァからの衝撃発言に、その場にいる全員が一斉に驚いてしまった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...