ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第二章 隠されたホムラの陰謀

第四十九話 女性騎士団長ヒミカ

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 シルバーウルフの村の墓参りとアルフレッドの遭遇から翌日、零夜達はホムラにある騎士団へと向かっていた。昨日起きた事を全て彼等に話す必要もあるのは勿論、アルフレッドの事について知る必要があるのだ。

「確かこの辺りだが……あった!」

 トラマツが指差す方を見ると、『ホムラ騎士団』という看板が目の前に見えた。この騎士団は前から存在している騎士団であり、ホムラの平和を守る為に建てられている。
 しかし、アークスレイヤーによる騎士団ができてからその仕事の座を奪われているのだ。

「よし!早速報告しに行くか」

 ヒューゴの合図で彼等が騎士団の中に向かおうとしたその時、一人の女性騎士が姿を現す。彼女は赤いポニーテールで黒い眼鏡、更には白い鎧を身に纏っていた。

「何の様だ?」

 女性騎士の質問に、ヒューゴが代表して冷静に前を向く。その目は偽りがなく、まっすぐな視線を彼女に向けていた。

「僕達はアルフレッドに絡まれた事を報告しに来ました」
「また彼がやったそうだな。この件については中で話そう。アークスレイヤーの奴等に知られたら困るからな」

 女性騎士は辺りを見回して確認をした後、そのまま零夜達を連れて騎士団の中に入り始めた。



「さて、君達の噂は聞いている。私の名はヒミカ。この騎士団のリーダーだ。では、昨日の事を教えてくれないか?」

 ヒミカは零夜達に自己紹介をした後、彼女は彼に視線を移しながら真剣な表情で質問をする。それに応じた零夜はコクリと頷いたと同時に、昨日の出来事を偽りなく話し始める。

「俺はルリカ達と共にホムラの街を楽しんでいましたが、あのバカが俺達に絡んできました。強烈アッパーで倒しましたが、服の肩部分にアークスレイヤーのマークが付いていたのは確認しています」
「なるほど……だが、返り討ちにするとは大胆な行動をするな……」

 零夜の話を聞いたヒミカは納得の表情をするが、更に彼の予想外の行動には驚くのも無理はなかった。領主の息子に対して普通こんな行動はできないが、零夜ならその様な事は通じない。彼は仲間を守る為ならどんな手段を使おうが知ったこっちゃないからだ。

「更に侍の様な輩もいましたが、その数は十人以上です」
「なるほど。奴等はアークスレイヤーが設立した悪徳騎士団「アルカス」だ。領主との協力関係によって設立された騎士団だが、和風に合わせて侍となっているのが特徴だ」

 ヒミカの説明に零夜達は納得の表情をしながら話を聞いている。昨日彼等に襲撃してきた兵士達が侍であり、それがアークスレイヤーの騎士団なら確かに辻褄が合う。
 こうなってしまうと領主だけでなく、騎士団まで相手にしなくてはならないし、アークスレイヤーも馬鹿ではないので選ばれし戦士達の対策はしているのだ。
 零夜達が今後の戦いはそう簡単にいかない事を確認する中、ヒミカは話を続ける。

「領主親子は月一に多くの女性達を次々と奪い去り、逆らう奴は逮捕となる傲慢な者共だ」

 ヒミカは更に領主親子の悪事を説明し、彼等について分かった事を零夜は冷静にメモを取りながら確認していた。そのメモの内容は以下の通りである。

・月一で多くの女性達を次々と奪い、奴隷にする。
・被害届を出そうとしても、領主によって揉み消される。
・街の人達は恋人や妹を奪われて困っている。
・ウサギの獣人も奴隷にされている。名前はジェニー。

 零夜が真剣にメモを取りながら話を聞く中、ヒミカはそのままジェニーというウサギの獣人について話を始める。

「ジェニーはかつて、ホムラ近くの村であるシルファに住んでいた。子供達からとても人気で頼りがいのあるお姉さんで、村人達からも頼りにされていたからな」
「なるほど……随分人気があったのですね……なんだか私に似ているな……」

 ヒミカの説明にヒカリは感心の表情をしながら納得し、ジェニーに親近感を感じる様になった。生まれた世界は違うとも、皆の為に頑張る姿は見事だと言えるし、特に子供達から人気があるのは自身と共通点があると感じている。
 するとヒミカは真剣な表情をしながら俯いたと同時に、ジェニーが現在の様になった理由も話し始めた。

「だが、それをぶち壊すかのようにアルフレッドが来た。子供達が人質にされて彼に従うしかなく、村は残念ながらアークスレイヤーによって占拠されてしまい、住民達は一人残らず逃げてしまった……」
「そんな……」

 ヒミカは俯きながら冷静に説明を終え、ルリカ達は悲劇的な展開に目に涙を浮かべていた。ジェニーがあまりにも理不尽で可哀想だと感じるのも無理はなく、理不尽な行為をしていたアルフレッドに対しての怒りも込められていた。
 零夜に関しては既に怒りで身体を震わせていて、アルフレッドに対する憎しみがますます強くなっている。だが、ここで怒りを放出する場合ではないと感じ取り、すぐに冷静な表情をしながら前を向いた。

「奴に対しては許さない気持ちもあるが、領主一家を倒すとなると、まずはアルカスを壊滅させる必要があるだろう」

 零夜は冷静な表情をしながら、アークスレイヤーの騎士団を壊滅させる事を提案。その内容に関しては皆も同意していた。
 領主一家の元に向かうよりは戦力を減らす事が重要となる為、先に騎士団を壊滅させるのが正解と言えるだろう。

「確かにその通りだ。更にアルカスについて調べたが、ベルカマスというリーダー騎士だけでなく、幹部のルシアもいる」
「ルシアについては魔術師と言われていて、闇と炎系統を使うのが主だ。遠距離を得意としている分、近接攻撃となると勝てる確率はある」

 ヒューゴとアカヤマの説明に零夜達が真剣に考える中、ソニア、零夜、エヴァが挙手をする。

「ルシアに関しては俺達三人なら倒せる」
「アタイも盗賊としての素早さがあるからな。奴の魔術も対策してやるぜ!」
「私もシルバーウルフの皆の分まで頑張らないといけないし、スピードには自信があるから!」

 三人の意気込みを聞いたヒューゴ達は、納得しながらコクリと頷く。彼等三人は韋駄天の能力を持っている為、素早い攻撃を得意としている。更に遠距離魔術でも軌道さえ分かれば、ルシアを倒せる事も可能なのだ。
 
「取り敢えずルシアは大丈夫ね。兵士達については私、ヒカリちゃん、ミミちゃんの特殊スキルなら上手く倒せるわ」
 
 倫子の自信満々の提案にミミとヒカリも笑顔で頷くが、零夜とヒューゴは思わず冷や汗を流してしまう。特にヒカリの歌のお姉さんスキルで一回酷い目に遭った事があるので、あの悲劇は二度と巻き込みたくないだろう。

「どうした?なんか体調が悪いが……」
「「いやいや、何でもないです!」」

 ヒミカが気になって零夜とヒューゴに声を掛けるが、彼等は苦笑いの表情で慌てながら何でもないと返す。それに彼女は疑問に感じるが、すぐに切り替えて前を向いた。

「まあいい。すぐにアルカスへ出発するぞ!奴等の悪巧みを阻止する為にも!」

 ヒミカの合図にその場にいる全員が頷き、彼女達はすぐに会議室から出たと同時に、アルカスの本拠地へと向かい出したのだった。
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