ヒーローズエイト〜神に選ばれし８人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

第二章 隠されたホムラの陰謀

第五十三話 悪徳領主との戦い

　領主一家の屋敷の外では、零夜達が彼等を倒す為に到着していた。彼等の前には敵兵達が既に配置についていて、零夜達を倒そうとしているのだ。その数は二百ぐらい。

「兵士の数は二百か。アミリス、頼んだぞ！」
「任せて！」

　アミリスは真剣な表情で弓矢を構え、上を向きながら上空に狙いを定めて放った。弓矢は上空に飛んでから下降したその時、弓矢の数が多く増えて敵兵達に襲い掛かってきた。

「「「ぐわあああああ!!」」」

　兵士達は弓矢攻撃を喰らってしまい、次々とダメージを受けてしまう。それと同時に零夜達が一斉に飛び出し、弓矢のダメージを受けた兵士達に襲い掛かる。

「水流斬すいりゅうざん！」

　零夜は忍者刀を水の刀である『水竜刀すいりゅうとう』に変化させ、流れるような斬撃を次々と繰り出しながら二十人の兵士達を倒した。

「フレイムブレイド！」

　ヒカリは剣を炎の剣に変え、強烈な炎の斬撃で十人の兵士達を問題なく倒していく。

「なかなかやるな。僕達も行くぞ！」
「「「おう！」」」

　ヒューゴ達も後に続いて多くの兵士達を次々と倒し、二百人いた兵士達は僅か数分で全滅してしまった。レベルの差が明らかになっているだけでなく、選ばれし戦士達を相手にするのは無謀だとしか言えない。

「彼等がいると本当に楽だな。よし！扉を開けるぞ！」

　ヒミカの合図で兵士の一人が扉をそのまま開くと、そこには兵士二人とアルフレッド、グレゴリーがいた。彼等は冷や汗を流しながら真剣な表情をしていて、警戒態勢を取っていた。

「アルフレッド・ムラマツ！グレゴリー・ムラマツ！貴様等の悪事は終わりだ！速やかに投降せよ！」
「貴様等！わしは領主だぞ！反逆罪にしてやる！」

　ヒミカの宣言に領主は自身の地位を利用して反論。そのまま二人の兵士がヒミカ達に襲い掛かってきた。

「そりゃっ！」
「ぐほぁ！」
「ほらよ！」
「ぐへら！」

　しかしソニアは得意の回し蹴りで兵士の一人を倒し、右ハイキックでもう一人も倒してしまう。この様子にグレゴリーは冷や汗を大量に流してしまうのも無理なかった。

「ええい！反逆罪で……」
「煩い！」
「へぶらっぱ！」

　グレゴリーの叫びの途中、エヴァが右ストレートで彼を殴り飛ばしてしまった。
　その威力は凄まじく、グレゴリーは２、３回転床を転がり、壁に激突。そのまま失神してしまった。

「父上が……やられた……くっ！」

　アルフレッドはグレゴリーがやられた光景に唖然とするが、すぐにその場から逃げ出して２階にある自身の部屋へと向かい出す。

「俺達はアルフレッドを倒しに行く！ジェニーに関してはヒカリさん！他に捕まった人達はミミと倫子さん！ヒューゴ達は捕まった人達の確認とケアを頼む！」
「「「了解！」」」

　零夜達は自身の部屋に逃げて行ったアルフレッドを追いかけ、ヒカリは単独でジェニーのいる地下牢へ。ミミと倫子は連れ去られた人達を助けに向かい出し、ヒューゴ達は屋敷の外へに向かい出した。

「私は零夜達の後を追いかける！他は倒れている者を次々と縛り上げて荷馬車に入れておけ！」
「「「はっ！」」」

　ヒミカは兵士達に真剣な表情で指示をしたと同時に、零夜達の後を追いかけ始めた。

※

　ヒカリはジェニーを救出する為、地下へ向かう階段を降りて地下牢に辿り着く。辺りを見回すとそこは暗くて薄気味悪く、明かりはランプのみとなっている。

「暗いな……よし！ライトマジック！」

　ヒカリは光の魔術を使って辺りを明るく照らし始める。地下牢は明るい空間となり、彼女はジェニーを探しに駆け出し始める。

「えーっと……ジェニーは確かこの辺りに……あっ、いた！」

　ヒカリがキョロキョロと見回しながらジェニーを探すと、牢屋の中にジェニーが怯えているのが見えた。身体中は傷だらけで、ボロボロの服を着ている。アルフレッドに酷い事をされていた証拠だ。

「誰……ですか？」

　ジェニーはヒカリの姿を見て、キョトンとした表情で声を掛ける。自身の前に居たのはアルフレッドではなく、知らない人だからこうなるのも無理はない。
　
「私？私は国重ヒカリ。あなたがジェニーね」
「はい……私を助けに来てくれたのですか？」
「ええ、その通りよ。ちょっとごめんね」

　ヒカリはジェニーに近付いて確認すると、彼女の首に鋼鉄の首輪が付けられているのを確認する。
　恐らく素材やデザインもこの世界の物とは違っている限り、アークスレイヤー製の首輪である事に間違いないだろう。

（なるほど……アークスレイヤーらしいやり方ね）

　ヒカリは冷や汗を流しながらこの首輪に納得し、ジェニーの両肩に優しく手を置く。その表情はとても優しく、まさに聖母のようだ。

「大丈夫。あなたを自由にさせてあげる」
「えっ？ヒカリさんが？」
「まあ、見てなさい」

　ヒカリは微笑みながらジェニーを優しく落ち着かせた後、彼女の首輪に手を触れたと同時に、集中力を高めて魔術を唱え始める。

「呪われた首輪よ。私の名の下に今すぐ消え給え！ホーリー・リリース！」

　ヒカリの魔術詠唱が終わった直後、ジェニーの首輪が光り輝き、そのまま塵となって消滅する。
　同時にジェニーはアルフレッドの奴隷から解放され、自由になる事ができたのだ。

「もう大丈夫！これであなたはアルフレッドの呪縛から解放されたわ！」

　ヒカリが笑顔で微笑んだその時、ジェニーの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。アルフレッドから解放された安堵感、自身を助けてくれた事で頭が一杯になり、涙が出てしまうのも無理なかった。

「ありがとう……ございます……！」

　ジェニーは涙を流しながらお礼を言いつつ、そのままヒカリに抱きついた。
　その様子を見ていたヒカリはジェニーを自身の胸の中に抱きしめ、よしよしと彼女の頭を撫でる。

「大丈夫……私が側にいるから……」

　ヒカリはジェニーを落ち着かせるまでここにいようと決意したその時、ミミと倫子が彼女達の元に駆け付けてきた。その様子だと任務は予定より早く終わったようだ。

「ヒカリ！こっちは終わったわ！連れ去られた人達は紬ちゃん達が保護してくれたし、今はケアをして落ち着かせているの」
「そうですか……良かった……」

　倫子からの報告にヒカリは笑顔で安堵のため息をつき、ミミと倫子はヒカリに抱き着いているジェニーに視線を移す。
　ジェニーはヒカリに助けられた事で嬉しさを感じていて、すぐに懐いてしまうのも無理はないだろう。

「そっちも終わったみたいですね。こうしてみるとなんだか親子みたいです」
「今は泣いているみたいだから、暫くは落ち着かせながら屋敷の外で待機しましょう」
「そうね。じゃあ、アルフレッドについては零夜君達に任せましょう！」
「ええ！すぐに転移します！」

　ミミは自身の足元に魔法陣を発動させ、倫子達と共にその場から屋敷の外へと転移した。