ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第三章 花咲くロベリア革命

第九十四話 ポーラと元気

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 それは零夜達がグラディアスに初めて到着した頃、ポーラは元気と共に行動していて、ベルナー洞窟へと向かっていた。洞窟にいる化け物を退治して欲しいとの事で、二人はその洞窟へと向かっていたのだ。

「確かこの先にあるみたいだが、その化物は怖いのかな?」

 タンクトップと半ズボンの少年の元気は、後ろにいるポーラに呼びかける。因みに彼女の服装は白いスカートと半袖のブラウスだ。

「ええ。相手はホブゴブリン。けど、油断は禁物だから気を付けてね」
「分かってるよ。まあ、相手が誰であろうとも、オイラには怖い物なしだからな!」
「あっ、待ちなさい!」

 笑顔で駆け出す元気にポーラが慌てながら追い掛け出したその時、彼は何かに気付いて思わず足を止めてしまう。

「ん?なんだ?」

 元気が遠くの方を見ると、なんとアークスレイヤーの戦闘員二人が、多くの奴隷女性を連れて歩いていた。しかも奴隷の数は十人程度で、何処かの村から引っ張り出していたのだろう。

「おい!奴隷についてはこのぐらいでいいんだな?」
「いや、まだだ。ベルザル様に献上するには十分に足りない。あと一人ぐらいいれば……」

 この光景を見た元気は首を傾げながら疑問に感じ、ポーラはこの光景に悲しげな表情をしていた。

「彼女達……可哀想に……」
「なんだありゃ?」

 悲しげな表情をしているポーラを見た元気は、気になった事を彼女に質問する。
 
「あれは奴隷よ。最近、多くの女性達が怪しげな集団によって連行されているの。何も悪い事はしていないのに連行されるなんて酷過ぎるわ……」

 ポーラの説明を聞いた元気は目の前の光景に視線を移し、怒りで拳を震わせていた。
 今の年齢には若過ぎると思うが、目の前の光景と説明を聞けば怒るのは当然。更に我慢できずに飛び出してしまうのも時間の問題だ。

「許せない……行って来る!」
「元気!」

 元気は予想通り我慢できず、戦闘員達の元に駆け出していく。そのまま彼等の前に移動した直後、剣を引き抜いて戦闘態勢に入っていた。

「おい!今の行為は良くないと思うぞ!」
「おい、なんだクソガキ。お前みたいな子供に大人の厳しさを教えてやるよ。こいつ等はな、ベルザル様の相手をする人なんだよ」
「しかも、それを使ってな……」

 戦闘員はまだ小学生ぐらいの元気に対し、これからの事を説明し始める。すると、ポーラが怒りの表情でこちらに向かってきた。しかも般若の顔で……
 
「余計な事を言うなァァァァァ!!」
「「ガバス!」」

 ポーラがダッシュで駆け出したと同時に、ドロップキックを戦闘員に炸裂してしまう。戦闘員はそのまま地面を引きずりながら倒れてしまい、消滅してしまった。
 余計な事をベラベラ喋るだけでなく、まだ小学生くらいの人間にとんでもない事を伝えようとしていた結果がこれだ。可哀想だが自業自得である。

「一体何すんだ?」
「聞かなくていいからね。それよりも大丈夫?」
「あ、ありがとうございます!」

 ポーラが急いで奴隷達の縄を解こうとしたその時、ワープゲートから突如一人の男が姿を現した。
 彼は黒いモヒカン頭で顔に骸骨ペイント、更にはパンクな服装を着ている為、外観からすればかなり危険な奴だろう。

(うわ……如何にもヤバそうだな……)

 元気は男の姿に心から思いながら、タラタラと冷や汗を流していた。すると男はポーラと元気に視線を移し、彼等は冷や汗を流しながらも身構える。

「俺の奴隷に手を出す奴はお前等か……」
「何者だ!?」
「俺はベルザル。アークスレイヤー所属の者だ。戦闘員達の元に向かおうとしたが、まさかお前等が倒したとはな……」

 ベルザルはギロリと元気達を睨みつけながら、両手に装着している鉤爪を光らせる。それと同時に元気は剣を引き抜き、構えながら戦闘態勢に入っていた。まさに一触即発となっていて、与える隙もないだろう。 

「アンタのやる事は許せない。オイラが倒してやる!」
「やる気か。死に急ぐようなら殺してやろう!」

 ベルザルは鉤爪を光らせながら元気に襲い掛かるが、彼は跳躍して回避する。それと同時に剣から紫色の波動斬撃を放たれ、敵に向かって真っ直ぐ襲いかかってきた。

「チッ!」

 ベルザルが波動斬撃を回避した直後、波動は地面に当たって爆発を起こしてしまった。
 爆発した跡地をよく見ると、普通の爆発ぐらいのレベルとなっていた。しかし、威力は十分にあるので要注意と言えるだろう。

「なるほど……ただのガキではないみたいだな」
「あったりまえだ!オイラはこの世界に転生してから剣術スキルを手に入れた。だからこそ、この世界で強くなって、立派な英雄になるんだ!」

 元気は剣を構えながら自らの目標を宣言したが、それを聞いたベルザルはニヤリと笑っていた。

「そう言う事か……だが、何か忘れてないか?」
「なんだよ?」

 ベルザルからの突然の質問に、元気は思わずキョトンとしてしまう。意味不明の行動に疑問に感じるのも無理はない。

「お前……夢の中で神様に会ってなかったか?」

 ベルザルからの質問を聞いた元気は、深く考えながら覚えている事を話し出す。
 
「転生した時に会ったが、時々色んな事を話してくれたぜ。確か選ばれし戦士とかなんとか……」
「その様子だと選ばれし戦士という事だな……なら、俺も本気を出すとしよう!」

 ベルザルは元気が選ばれし戦士の一人だと分かった直後、全身から黒いオーラを発動させて自身を包み込み始める。そしてオーラが消えた直後、彼は黒い狼男に姿を変えてしまった。
 そう。この姿こそベルザルの本気の姿である。

「狼男!実在していたのか!」
「そうだ!俺は子供が相手でも容赦しない!」

 ベルザルはスピードを上げたと同時に素早く動き出し、元気を翻弄し始める。そのまま彼の背後に回り込もうとするが、素早く回避されたその時だった。

「大切断!」

 素早くベルザルは爪を光らせながら駆け出し、強烈な一撃で元気の身体を切り裂いてしまいった。大量の血が傷口から飛び出してしまい、一撃必殺で戦いは終わりを告げられた。

(そんな……ここで俺が……死ぬなんて……)

 ベルザルが元気から離れた直後、彼はそのまま爆散してしまった。剣は地面にガシャンと落ちてしまい、ベルザルがそれを戦利品として拾った。

「そんな……元気が……」

 元気の死にポーラの目から涙が出てしまったその時、ワープゲートが出現して戦闘員達が姿を現す。そのままポーラを拘束しただけでなく、囚われの奴隷達を運び始めた。

「こいつも奴隷にしろ。すぐに帰還するぞ!」
「「はっ!」」
「離して!元気!元気ー!」

 ポーラの涙ながらの叫びも聞かず、戦闘員達は彼女達をワープゲートの中に放り込む。そのままベルザルもワープゲートの中に入ってしまい、ここの跡地には何も残っていなかったのだった……
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